明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

株式会社マクロミル
代表取締役社長
辻本秀幸

●辻本秀幸(つじもとひでゆき)1964年生まれ。奈良県出身。同志社大学卒業後、リクルートに入社、INS(情報ネットワーク)事業部に配属。FNX(ファクシミリネットワーク)事業部の責任者を経て、株式会社リクルートイサイズトラベル代表取締役社長に就任。その後、リクルートに復帰し、タウンワーク担当エグゼクティブプロデューサーを務めるほか、株式会社リクルートHRマーケティングにて、複数部署のエグゼクティブマネジャーを兼任。06年4月、マクロミルに入社し、執行役員ネットリサーチ事業部長に就任。同9月、代表取締役社長に就任し、現在に至る。

第32回 前編

ネットリサーチの裾野を拡大したい

「システム」と「人」が強み
最初に御社の成り立ち、会社概要をお聞かせください。

辻本社長: 郵送調査や訪問調査など、従来の市場調査は膨大な手間と時間、そしてコストがかかるものでした。企業競争が激化する現代において、企業の事業や意思決定のスピード化が進んでいましたが、市場調査は時代に合った進化を遂げていなかったのです。そこで、2000年、マクロミルはネットリサーチ専門企業として創業し、インターネットを活用して “スピーディで誰もが手軽に利用できる”市場調査「ネットリサーチ」の提供を開始しました。調査の過程を徹底的にシステム化することで、従来に比べて圧倒的に効率的かつ低コストな調査サービスを実現したのです。現在、調査モニタ50万人を対象としたネットリサーチのほか、携帯電話を活用したモバイルリサーチや、世界30カ国、500万人の消費者を対象にした海外市場調査、リサーチの企画設計・集計・分析サービスの提供なども行っています。

インターネットを活用した市場調査を行っている企業はほかにもあると思いますが、御社の強みは何でしょう?

辻本社長: 「システム」と「人」だと思います。

システムに関しては、創業当時から、調査票作成から調査モニタへの依頼、回答回収、集計まで、一気通貫に処理を行うリサーチシステムを独自開発しています。当社システムは、品質向上を研究する社内シンクタンクの研究結果や顧客要望を取り入れながら数年おきに大幅なバージョンアップを行っており、リサーチシステムとしては常に国内最先端で進化していると自負しています。この基幹システムにより、調査開始から24時間で結果を納品するスピードと、年間7,000本を超える膨大な調査案件を安定的かつ高いクオリティで納品することを実現しています。

システムの強みを持つ一方で、「人」によるサービスにも力を入れていることが弊社の強みです。スタッフがリサーチ提案力やデータの分析力を磨き、はじめて調査を利用するお客さまから、調査のプロであるお客さままで、幅広いユーザの方に対応し、きめ細かく痒いところに手が届くサービス提供を心がけています。どちらか一方だけでなく、この両方があるところが、当社の選ばれる理由だと思っています。

リサーチの必要性、可能性
前職のリクルートからマクロミルへ移られた経緯は?

辻本社長: マクロミルは創業から5年で東証一部上場、と急速な成長を遂げてきました。ネットリサーチの浸透・拡大が続く市場の中で、競合環境も激化する中、さらなるもう一段高い成長を目指すためには、創業期とは異なる「組織力強化」が必要とされていました。そこで、リクルート時代に大きな組織をまとめて、いくつかの新たな市場に挑戦してきた私の経験が買われ、経営に参加しないかと声をかけてもらったのがきっかけです。

前職で、マクロミルのリサーチを使ったこともあり、その質の高さやコストパフォーマンスの素晴らしさは理解していました。また、ネットリサーチの必要性、可能性はこれから更に大きくなっていくと思っていたので、世の中に必要とされる事業だとも感じました。私自身、リクルートで20年ちかく勤め、今度は自分が会社を率いて事業拡大に挑戦したいと思っていたタイミングだったので、第二創業を受けて立つという思いで、マクロミルに参加しました。

リサーチの必要性、可能性とは具体的には?

辻本社長: 日本のマーケティングは、欧米に比べて意識が遅れています。マーケティングとはものが売れる仕組みづくり、つまり事業の成功確率を高める仕組みであり、それには科学的な裏づけであるリサーチが欠かせないのです。日本では、長らく一億総中流といわれた時代がありましたが、現在ではよい商品さえ作れば売れるという時代は終わり、消費者のライフスタイルもニーズも多様化しています。変化の激しい市場環境の中で成功するためには、消費者ニーズを的確に捉えたマーケティングの重要性が高まっています。

ネットリサーチの登場で、これまで調査を行ったことのなかった企業でも、手軽なコスト、スピードでリサーチを行うことができるようになりました。今後は、企業におけるリサーチの活用がさらに進み、自社の課題について、リサーチを行い、マーケティング戦略を練る企業が増えていくと思います。

今後の事業展開は?

辻本社長: ネットリサーチの裾野をより拡大していきたいと思っています。現在市場調査を多く活用しているのは、いわゆる大手の企業や代理店などが多いのですが、今後は中小企業や商店などを経営する個人事業主の方にも活用してもらいたいですね。例えば、ある地方の商店街の活性化のために、ネットリサーチを実施した例もあります。その街に在住する消費者を抽出して、「商店街に行く頻度や、抱いているイメージ」「よく行くお店」「スーパーではなく商店街を利用し続けているお客様は、なぜ利用し続けているのか」などさまざまな質問を行いました。大企業でなくても、消費者の実態や意向を分析し、調査データで把握することで、新たな対策を打ち出すヒントが見出せるのではないでしょうか。こういった形で、できるだけ多くの方に、より身近な感覚で市場調査を活用してもらいたいと思っています。

顧客満足とそれを支える従業員満足
社長として心がけていらっしゃることは何ですか。

辻本社長: 現在弊社は第二創業期にあると考えています。さらに大きく飛躍するために、組織の拡大・強化に取り組んでいます。常に大事にしたいと考えているのは、顧客満足(Customer Satisfaction=CS)の向上なくしてサービスの拡大はないということです。CSを一層高めるとともに、そこに繋がる従業員満足(Employee Satisfaction=ES)の向上にも力を入れています。

ESに関して、具体的にどのような取り組みを行われているのでしょうか。

辻本社長: 権限委譲を行い、社員1人1人が自分で考え、実行していくことのできる力を養っています。それによって社員の判断力や実行力が成長し、権限が降りることで決断も早くなり、お客様の要望に素早くこたえることもできます。それがCSにもつながっていくと考えています。

自分の成長速度にこだわってほしい
小学4年生のころから、将来は「社長になりたい」と考えていたという辻本社長。そのきっかけとは?休日の過ごし方や、転職など新しいことに挑戦しようとしている読者へのアドバイスもお伺いしました。