代表取締役社長
●中村利江(なかむらりえ)富山県生まれ。関西大学文学部卒業。大学在学中、女子大生のモーニングコール事業を立ち上げ学生起業家として活躍。大学卒業後、リクルート入社。月間ハウジング事業部でトップセールス、年間MVP賞受賞。その後インテリアコーディネーターを経て、1998年ハークスレイ(ほっかほっか亭本部)入社。ケータリング事業の立ち上げから、仕組み作りを開発し、売り上げに貢献。2001年プランニング会社、キトプランニング設立。同年夢の街創造委員会マーケティング担当役員として事業をサポート。2002年社長就任。2006年大証ヘラクレス上場。
ユーザーと店舗“双方にメリット”
出前館成功の秘訣とは?
- 最初に会社概要をお聞かせください。
中村社長:ウェブサイト「出前館」の運営が主な事業です。「出前館」では、約8,400の出前・宅配などを行っている店舗の情報を掲載し、そのサイトを見られた方がそのまま注文ができる仕組みを提供しています。
イーコマースの特徴といえば一般的には、「あなたの商品が日本中で、世界中で売れる」ことですが、弊社のサービスは地域密着型のイーコマースです。「あなたの商品をあなたの地域で売りましょう」ということです。
今加盟いただいている店舗は、ピザやお寿司など、飲食の出前が多いですが、徐々にマッサージや修理、掃除などジャンルが広がっています。今後も“モノ”だけでなく、サービスへとジャンルを広げていきたいと考えています。
- これまで出前といえば、チラシを見てというのが一般的でしたが、「出前館」の登場で変わりましたね。
中村社長:地方ではまだまだですが、都市部ではかなりの認知度を得られていると思います。
- 成功の秘訣はなんだったとお考えですか?
中村社長:ユーザーの方と店舗の方、双方にきちんとメリットを示すことができたことではないでしょうか。
まず、ユーザーとしては、何か食べ物の出前を注文しようと思ったとき、ピザ屋さんのチラシならピザしか選ぶことができません。しかし、出前館ならピザや寿司、洋食などさまざまなものを見比べることができます。
一方、店舗の方にとってはチラシを配るよりもコストを抑えることができます。実際、コストを半分程度に抑えることができたというお声をいただいています。その結果、特に都市部では「出前館に入っておかないといけない、入ってるのが当たり前」と思っていただけるようになりました。
- 中村社長はもともと別の会社で働かれ、独立もされていたそうですが、どのような経緯で社長に就任されたのですか?
中村社長:「出前館」と出会ったのは99年のことです。私は外食業の企画職で、デリバリー事業の企画の責任者でした。当時、外食産業は厳しい状況におかれており、その打開策の1つとしてデリバリー事業が検討されていました。それでいろいろと調べているときに、「出前館」のことを新聞で読み、インターネット上のデリバリー・サービスのポータルを目指すというのが非常に面白いと思い、その日の内に早速、詳しい話を聞く手配をしました。そして、当初の自社サイト運営の予定を変更して「出前館」への加盟を決めました。それがこの会社との最初の関わりです。
- その後、社長になられた経緯は?
中村社長:前職を辞めて、自分のマーケティング会社を立ち上げたのですが、その時、コンサルティング会社の1社として一緒に仕事をしました。
私は「出前館」のビジネスモデルはとても面白く、絶対に成功すると信じていました。しかし、当時は加盟店舗数も少なく赤字で、社員にも給料を十分に払えておらず、社内が暗い雰囲気でした。
そんな状況を打開するため、私がコンサルタントとして、一緒に企画書を書いたりしながらビジネスモデルコンテストに出ました。結果、幸いにも合格し、賞金4,000万円をいただくことができました。
そのとき、前社長から「社長を任せたい」というお話をいただき、引き受けることになりました。
- 迷いはありませんでしたか?
中村社長:私はもともとあまり迷わないタイプなんです。迷っている間に、周りの人が前に進んでしまうので、即断するようにしています。しかし、このときばかりは迷いましたね。3日間だけですが(笑)。
- どうしてですか?
中村社長:前の会社を辞めて独立したのも家族とゆっくりする時間を持ちたい、というのが理由だったのです。しかし、社長業を引き受ければそれができない忙しい生活に逆戻りしてしまいます。
しかし同時に、こんなチャンスをもらえる人なんてめったにいない、自分はとても幸運なんじゃないかとも思いました。自分の会社は3人で始めた小さな会社です。どんなに頑張っても初年度の売上2,000万円を2倍、3倍にするのは難しいでしょう。でも、「出前館」というビジネスモデルならそれができる、売上2億円、2兆円を狙える会社にもできる。だったらそれにチャレンジしてみるのもいいんじゃないか、と思い社長をお引き受けしました。
- 『「最大限の努力をしたのか」と自分に問いかけてみよう』
- 「失敗はあっても後悔はない」そういいきる中村社長が、社長として心がけていらっしゃることや、読者に対するアドバイスなどをお聞きしました。