問題発生時のコミュニケーション術「3つのステップ」
コミュニケーションは相手のあること。相手の感情に注目して、自分にできる行動を選択するのが基本です。自分の感情のまま行動に発展させず、相手の感情も意識的に確認していく必要があります。
しかし、ここで気をつけなくてはいけないのが、相手の感情ばかりを気にして自分の感情に注意を払わないことです。自分の感情を無視したり、抑圧したりすることは、逆に感情的な行動の原因になります。感情の波に「押し流される」という状態です。
建設的で気持ちのいいコミュニケーションには、自分の感情の把握やコントロールが不可欠なのです。
平常時、自分の感情に意識的でいることは、それほど難しくないかもしれません。しかし、何か問題が発生したときに、感情をコントロールしていくことはとても難しいものです。
そんな時には、以下の3つのステップを意識して、問題の対処に進むことが理想です。感情に流されない建設的なコミュニケーションを開始することが可能になります。
(1)起こっている事実を把握する
(2)自分の感じ方を確認する
(3)解決のための最適な方法を考える。
しかし問題が大きく不安が募ると、その不安に押し流され、自分の感情を客観的に捉えることのできない状況に陥ることがあります。そうなると最後の(3)のステップに到達することなく(1)や(2)の状態からコミュニケーションを始めてしまいがちです。
(1)から先に進めない状態というのは、事態の大きさに萎縮してしまい、自分の感情にも向き合うことができない場合が考えられます。この状態からコミュニケーションをスタートしてしまうと、相手に「状況の解釈」「とるべき解決策」を完全に委ねてしまうことになります。いわゆる「傍観者」の状態であるといえるでしょう。
また(2)から先に進めない状態とは、「自分は被害者だ」と錯覚しがちな状態です。ここからコミュニケーションをスタートすると、過剰に相手を責めてしまったり、また必要以上に責任を感じてしまい、客観性のある合理的な判断ができません。結果的に「加害者」になってしまうことも少なくありません。
こう考えると、どんなに不安が大きくとも何とかそれを乗り越え(3)の状態に達するべきだといえそうです。しかし、言うのは簡単ですが、そのためには、ちょっとしたコツが必要です。
問題が困難なほど、不安も大きいのが正常です。不安を恥じることはありません。まずは、自分を(3)の状態までもって行くことに努めてください。それがコツです。(2)のステップで、感じたままに行動せずに、自分の感じ方を客観的にとらえ、目的達成にふさわしい行動を選び、実行することです。人間は何かに没頭すると、いつの間にか「不安」を忘れてしまうものなのです。
たとえば冒険活劇のヒーローたちを思い起こしてください。苦難に遭遇しても、ポジティブ、楽観的に難攻不落の要塞を攻め落とします。彼らの勇気の源泉は、いまこの瞬間、もっとも適切な行動の選択と実行に忙しく、考えても仕方のない不安や恐怖にとらわれている時間などない、ということです。