明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

株式会社伝統デザイン工房
代表取締役社長
高橋万太郎

●高橋万太郎(たかはし・まんたろう)1980年群馬県前橋市生まれ。 立命館大学経済学部卒業。株式会社キーエンスにてコンサルティング営業に従事。 2007年より株式会社伝統デザイン工房を設立し、日本の伝統・地場・地域産業の価値を普及させるための仕組みづくりを開始。2008年に各地の伝統的手法で造られた天然醸造醤油を扱う専門サイト「職人醤油.com」をスタート。

第67回

職人の本音からサイトを立ち上げ
伝統・地場産業に活気を与えたい

こだわりの中の本音
起業までの経緯をお聞かせ下さい。

高橋社長:新卒でキーエンスに入社。他社からも内定はもらっていましたが、とにかく営業力をつけたいという基準で決めました。その当時、社会人の先輩に「石の上にも3年と言われているけど、確かに的を得ている言葉だと思うよ」と言われ、何がなんでも3年は辞めないということと、3年たった時点でどうするか決めていました。

何故、事業のメインドメインが「醤油」なのでしょうか?

高橋社長:3年間営業した経験を踏まえ、起業するなら物を売ったり、売り方の仕組みを提案していく仕事をしたいと考えました。具体的には、自分が本気で自信と誇りが持てる商材を扱いたいというのをベースに、 まずは「営業力」が求められている業界や商材を約300リストアップしました。

退職と同時に結婚したんですが、マーケティングと新婚旅行を兼ねて車で日本を旅しました。そこで感じたことは、伝統産業・地場産業に関わっている人が共通して言うことに、「自分達の作っているものには自信を持っている。ただ、中国製品や大量生産されたものに押されている…。自分達は職人であって商人ではない。できることなら、ものづくりに専念できるのが理想なのだけど…」という本音。「日本人に欠かせないもの」「消費者から見た時に、職人技で造られたたものと、量産されたものの境目が曖昧なもの」とは?行き着いたのが「醤油」でした。早速、関東にある醤油メーカーを30軒くらい飛び込みでまわって話を聞きました。そこに自分の介在価値が十分にありました。

若者と地域が一体化する社会
今後の事業展開についてお聞かせ下さい。

高橋社長:醤油は日本人に欠かせない、空気と同じようにあって当たり前の存在ですよね。

それなのに、食べ物や食材にこだわっていても、醤油にまでこだわっている人はまだまだ少ないと思うんですよ。

実は、輸入原料の数倍もする国産原料で、熟成期間も2倍から5倍以上かけて職人さんが丹精込めてつくる醤油も存在するんですよ。決して、職人さんが造った醤油がいいものだという画一的な線引きをしたいのではなく、色々な醤油があるのだという認識の上で選択してもらえるような日常に貢献することを目指しています。

さらに、自分にあった醤油を選ぶことをきっかけに、日本の古きよき食文化に興味を広げてもらいたいと思いもあります。

将来的にはどのような取組みをしたいのでしょうか。

高橋社長:各地の地場産業や地域産業に対し、その産業や地域に適した「価値を普及させる仕組み」を提案、一緒につくっていく会社にしていきたいですね。そして、そこに若い人材を送り込んでいきたいです。

伝統とか文化の継承には、「変えてはいけない部分と、変えなくてはいけない部分がある」と言われますが、その土地の伝統とか歴史がベースにあって、若い感性が入り込んでいくことが必要だと考えています。決して若者だけの作業ではなくて、両者が上手く融合されて、次の世代に継承されていくものが出来上がっていければと思います。

私自身、若い世代の「豊かさ」とか「幸せ」のものさしの基準が変わってきているように感じているのも理由ですね。

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