●神原弥奈子(かんばらみなこ)1968年生まれ、広島県出身。大学院修士課程終了後、93年に株式会社カプスを設立、伊丹十三監督の映画のホームページ制作などを手がける。01年、株式会社ニューズ・ツー・ユーを設立、企業のニュースリリースのポータルサイトの運営などで、インターネットを活用した企業PRを支援している。
新しい企業PRの方法を追及
- 最初に会社概要をお聞かせください。
神原社長:インターネットを活用し企業PRを支援しています。具体的には、ニュースリリースを登録いただき、国内最大級のニュースリリースのポータルサイト「News2u.net」と、提携ポータルサイトで公開されるという形で、ステークホルダー(利害関係者)に、ダイレクトにアピールできる仕組みを提供しています。
また、社内コミュニケーションを充実させるための「電子社内報」のサービスも提供しています。
- 多くの企業が御社のサービスを利用していますが、その魅力は何だとお考えですか?
神原社長:従来、プレスリリースといえば、マスコミが対象でした。しかし、その場合、メディア独自の視点で編集された情報が世の中に提供されることになります。しかし、直接プレスリリースをステイクホルダーに届ける仕組みがあれば、各企業が自分の言葉で語りかけることができます。そこが魅力なのだと思います。
- 起業を思い立たれたきっかけを教えてください。
神原社長:大学院を卒業して、なんとなく就職のタイミングを逃しました。でもフリーランスはいやだなと思っていたので、消去法で会社を作ろうと思い立ちました。経営者の家で育ったので、周りに社長と呼ばれる人がたくさんいて、起業に対する意識のハードルが低かったのもあります。
- その時は「こんなことがしたい」という明確な目標はありましたか?
神原社長:いえ、なかったですね。ただ学生のころからフリーランスで編集や取材の仕事をしていたので、それに関連することには興味がありました。また、パソコン通信の時代からネットを使っていましたので、インターネット関連のことをやりたいとも思っていました。それで、カプスという会社を立ち上げ、ウェブ制作を手がけるようになりました。そこでは、知り合いの紹介もあり、企業のほか、篠田正浩監督の『写楽』、伊丹十三監督の『スーパーの女』など映画のホームページを制作しました。
- 早くからインターネットに目をつけられていたということは、そこにビジネスの可能性を感じられていたのですか?
神原社長:単純に「インターネットは楽しい、だからみんなに使ってほしい」という気持ちが強かったですね。90年代には、ホワイトハウスのホームページができて、当時のクリントン大統領の飼い猫の鳴き声が聞けたり、色々と技術が進展していました。私はそんな技術の進展にワクワク、ドキドキしていたので、それを伝えたいと思っていました。
ただ、振り返ってみると、内輪の盛り上がりという感じもしますね。当時はまだADSLも普及しておらず、インターネットといえばダイアルアップで接続していた時代。つまりインフラが整っていませんでした。そんな環境で、「こんなこともできますよ、すごいでしょ」と作り手側だけが盛り上がっていたという感じです。
- それでもインターネットにこだわり、01年にはニューズ・ツー・ユーを設立されたのはなぜですか?
神原社長:やっぱりインターネットは便利なんです。だからそれを伝えたいと思っていました。98年ごろには既に、ニューズ・ツー・ユーで行っている企業がプレスリリースを直接公開できる仕組みを思いついていました。ただ、当時はまだマスメディアが中心の時代。すぐには実現しませんでしたが、21世紀は本格的なインターネットの時代になるだろうから、どうしても01年中には本格的にインターネットを活用する会社を作りたかったんです。
- 立ち上げ当初はご苦労も多かったのではないですか?
神原社長:プレスリリースといえば、企業内では広報が担当する仕事です。そして、従来の広報の評価基準は、いかに多く新聞などのマスコミに掲載されるかでした。ですので、「ネットで先に公開されてしまってはマスコミに取り上げてもらえない」と、消極的な企業がほとんどでした。ですので、目が覚めたら急に会員が増えていた、なんて夢を見ることもありました。
- それでもビジネスモデルを変えようとは思われなかったのはなぜですか?
神原社長:自分のやろうとしていることは、正しいことだ、みんなの役に立つことだと信じていたからです。
- その信念の通り、企業のインターネットに対する姿勢も変わってきましたね。
神原社長:Web2.0が大きいと思います。ユーザーの行動に目を向けるようになり、インターネットの重要さが理解され始めたのだと思います。
マスコミに取り上げられる情報は一時的なものです。しかし、ECの分野でロングテールという言葉が注目されているように、長い時間軸で見たときには、インターネット上でコンテンツとしてアーカイブされることが力になります。そのことが理解されてきたのではないでしょうか。
- 『ダメもとでチャレンジしてほしい』
- 社長として常にぶれない判断を心がけているという神原社長。
そのために必要なこととは?また、社長という立場の一番の魅力などを伺いました。