明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

株式会社マクロミル
代表取締役社長
辻本秀幸

●辻本秀幸(つじもとひでゆき)1964年生まれ。奈良県出身。同志社大学卒業後、リクルートに入社、INS(情報ネットワーク)事業部に配属。FNX(ファクシミリネットワーク)事業部の責任者を経て、株式会社リクルートイサイズトラベル代表取締役社長に就任。その後、リクルートに復帰し、タウンワーク担当エグゼクティブプロデューサーを務めるほか、株式会社リクルートHRマーケティングにて、複数部署のエグゼクティブマネジャーを兼任。06年4月、マクロミルに入社し、執行役員ネットリサーチ事業部長に就任。同9月、代表取締役社長に就任し、現在に至る。

第32回 後編

自分の成長速度にこだわってほしい

社員は家族、そして兄弟姉妹
社員にはどのようなことを望まれていますか?

辻本社長: 自分の成長速度にこだわってほしいと思います。

若いうちにいろいろなことを吸収し成長したほうが、後々活躍できる可能性が高まります。自分が目標と定めたことをしっかりとやりきっていけば、信頼度も高まり、大きな仕事を任せてもらえるチャンスも増えるのではないでしょうか。

辻本社長にとって、社員はどのような存在ですか?

辻本社長: 自分の家族、兄弟姉妹のような存在です。家族のような存在だから、私も本音を言うし、社員にも本音を伝えてほしいと思っています。

また、私の経験や知識を伝えたい、吸収してもらいたいと思っています。だから時には社員の飛び込み営業に付き合い、言葉だけで伝えるのではなく、実際の仕事の現場を通して知識や経験を伝えていける場を積極的につくっています。

社長が飛び込み営業ですか。相手の方も驚かれるのでは?

辻本社長: 名刺を出すと驚かれることもありますよ。東証一部上場企業の社長で飛び込み営業をしているのは私ぐらいじゃないでしょうか(笑)。

働いている人が働きやすいと思える関係性を築きたい
小さいころはどんなお子さんでしたか?

辻本社長: 6歳ぐらいまではわがままなガキ大将でした。それが小学4年のころから転校が多くなり、新しい学校でなじむために周りに気を使うようになりましたね。

今でも、トップダウンというより、社員の方の意見を聞きながら物事を進めるタイプの社長なのでしょうか?

辻本社長: 人間、バランスだと思います。トップがはっきりとした決断を下さなければならない部分もあり、みんなの意見を聞き協調しながら物事を進めていくべき部分もある。しかし、どんな場合であっても会社の将来像に対するビジョンと価値基準だけはしっかり持っていなければならない。ビジョンと価値基準を社内にしっかりと浸透させた上で、社員にどんどん権限を委譲していき、基本的にはそれぞれの判断に任せ、自由に仕事をしてもらいたいと思います。

昔から会社を経営したい、という思いはありましたか。

辻本社長: 小学4年生のとき、将来の夢を「社長になりたい」と書いたことがありました。その時は担任に、「世の中、そんなに甘くない」といわれましたが(笑)。

なぜ社長になりたいと?

辻本社長: ひいおじいさんが戦前、食品メーカーを経営していました。いろいろあって、もうその会社はなくなってしまったのですが、その話を聞き、「自分の代に、自分の力で会社を再建したい」と小学生の時に思ったことを記憶しています。

そうしたきっかけから、会社を経営したいと思い始めましたが、具体的にどんな分野でということはあまり意識していませんでした。それよりも、自分の責任で物事を生み出すことができる役割にあこがれていました。また、働いている人が働きやすい家族のような関係性を築きたいなと思っていました。それが今に通じているのでしょう。

では就職されたときも起業を意識されていたのですか?

辻本社長: 就職当初は、3年ぐらい働いたら独立しようと思っていました。だから早く実力をつけたい、とがむしゃらに頑張っていました。リクルートでは、次々と関連会社の社長や新事業など、新しいことに挑戦させてもらって、結局約20年勤めました(笑)。起業したわけではありませんが、東証一部上場企業のトップを担うまでになったのは、全力で経験を積んできたおかげです。

「楽」ではなく「楽しく」やりがいのある仕事
現在、御社は第二創業期にあるとおっしゃっていました。創業のころとの違いはなんでしょうか?

辻本社長: 規模が大きくなってきたからこそ、そこで働く「人」を育てるということがますます重要になってきていると思っています。

規模が大きくなることで、動きが遅くなることもあります。そうならないよう、人を育て、お客様に素早くサービスを提供できるようにすることが必要です。そういう意味で、権限委譲が大切になると考えています。

社員を育てるということを強く意識されているのですね。

辻本社長: はい。私自身、元々独立したいという気持ちを持って前職のリクルートに就職しました。今でこそ、リクルートは日本を代表する大会社ですが、当時はまだまだベンチャー企業という雰囲気が強かったですし、周りにも私同様、独立志向の強い人間が多かったように思います。

独立という目標があったため、自分自身で「早く実力をつけなければ」という気持ちがありましたので、がむしゃらに頑張りました。とにかく決められたことはきちんとこなすということを徹底し、自分自身大きく成長できたと思います。そして、成長の結果、いろいろ大きな仕事を任せてもらえたり。

ですので、社員にも同じように自分を成長させることにこだわってほしいと思っているのです。

しかし、大変なことですよね?頑張りが続かないことも…。

辻本社長: 確かに大変なことだと思います。でも、若くしていろいろと任せてもらえるというのは、ものすごいやりがいにつながります。

確かに、楽ではないかもしれませんが、責任感をひしひしと感じながら楽しんで仕事をすることができました。

後々生きる知恵や力
休日などのようにお過ごしですか?

辻本社長: 基本的には土日は休むことにしています。月曜から金曜までは思いっきり働いて、週末はゆっくりと充電する。メリハリをつけることが大切なのではないでしょうか。

最後に読者にメッセージをお願いします。

辻本社長: とにかく自分の成長速度にこだわってください。最初の2年ほどは本当にドロドロになっても、何かをものにするまではとことん頑張る。そうすれば自ずとチャンスも増えるはずです。

もし、転職を考えていらっしゃるなら、その会社の人事制度や、面接で接する社員の方などを通して、その企業が本当に成長にこだわっているかどうかを見極めることが大事です。成長できる企業では、同じ1年を過ごすにしても3倍くらいの経験の違いがでると思います。自分を成長させることによって身につけた知恵や力は、消えない財産となり、たとえ会社や仕事を変えたとしても活きる「実力」として残るでしょう。

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編集を終えて
オフィスにお邪魔したとき、ちょうど誕生日の社員の方がいらっしゃったらしく、ハッピーバースデイの歌が聞こえてきた。「社員とは家族のような関係でありたい」と辻本社長はおっしゃっていたが、その関係性は社長・社員の間だけでなく、社員同士にも当てはまるようで、非常にフランクな雰囲気の社内だった。辻本社長の顧客満足度・従業員満足を重視する姿勢こそ、マクロミルの成長の原動力となっているのだろう。