明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

株式会社セプテーニ
会長兼CEO
七村守

●七村守(ななむらまもる)1955年、大阪生まれ。79年、山口大学卒業後、リクルートに入社。大阪、岡山、東京に勤務したのち、北関東支社長に。90年に独立して、仲間7人とセプテーニを設立。01年8月にジャスダック上場。今年10月には持ち株会社への移行を予定し、グループ全体の企業価値の向上を目指す。
(株)セプテーニWebページhttp://www.septeni.co.jp/

第17回 前編

失敗を繰り返して大きくなった

強く偉大な会社を作りたい
御社の事業内容を教えてください。

七村会長: Web広告からリスティング広告、モバイル広告など幅広く扱っている総合インターネット広告代理業です。

競合他社と比べると、どこに強みをお持ちですか?

七村会長: 弊社は競合のように自社媒体を持っていたり、特定の媒体に依存しているわけではないので、顧客オリエンテッドであることが強みの一つです。またWeb2.0に対応したリスティング広告やアフィリエイトに注力しているのも、他社との違いでしょう。現在はテクノロジーとクリエイティブの強化に努めていて、今後も最先端の手法で広告事業を展開していく予定です。

御社はほぼ毎年、増収増益を続けています。勢いがありますよね。

七村会長: 創業時代から「強い会社になる」ことを目指して努力を続け、14年目で売上100億円を突破しました。次の7年の目標である売上1000億円という規模になると、会社が社会に与えるインパクトも大きくなります。これからは、ただ強いだけではなく、「強く偉大な会社になる」ことを基本方針にして、世の中から評価される会社にしていきたいですね。

残金7万円で大ピンチ…
経営で気にかけていることはありますか?

七村会長: いま経営の基本方針として掲げているのが、「スピード」、「ストレッチ」、「パートナーシップ」、「フェア&オープン」、「オリジナリティ」、「パッション」、「フリー&ルール」という7つの原則。いずれも強く偉大な会社になるためには欠かせないものだと思っています。

御社は昔から月次決算を社員に公表していると聞きました。それは「フェア&オープン」の一環でしょうか?

七村会長: じつは創業してから3ヶ月目に、3000万円あった資金がほとんど底をついてしまったことがありました。年末のあるとき、経理の女性社員から「社長、もう7万円しかありません」と、僕にそっと耳打ちされてね。お金がないことを大声で話して社員に聞かれたら、みんな辞めてしまうんじゃないか心配して、僕もその場は隠していました。でも、お正月もずっと悩んで考えた末、隠してもいずれはバレると思い直して、正直に社員に話しました。

どうなったのですか?

七村会長: 不思議なことに、会社にお金がないとわかっても、誰一人として辞めなかったんです。情報をディスクローズすることは、マイナスになるどころか、むしろ社員に当事者意識が芽生えてプラスの効果が大きい。それ以来、つねに「フェア&オープン」は意識しています。

ちなみに、キャッシュがないという危機はどうやって乗り超えたのですか?

七村会長: 取引先からの入金予定は4月だったのですが、これもディスクローズで、通帳のコピーを持っていって事情を話し、なんとか1月中に振り込んでもらえないかと頼みにいきました。普通なら、お金がないと打ち明ける会社とは取引したくないですよね。ところが、5社のうち、取引をキャンセルしたのは1社だけで、2社は前倒しで入金してくださった。この経験も、経営をオープンにするという基本方針のもとになっています。

失敗したからこそ、いまの自分がある
他に経営で苦労されたことはありますか?

七村会長: いろいろありますが、とくに印象深いのは、7年目に、社員が7ヶ月連続で毎月1人ずつ辞めていったことですね。当時は社員が20人強の会社でしたから、次々と7人もの社員に抜けられると非常に困る。それ以上に、僕は「人の集まる会社にしたい」と考えていたから、退社を思いとどまらせられなかったことがホントにつらかったですね。

その経験は、何かの役に立ちましたか?

七村会長: 考え方が変わりました。それまでは「人の集まる会社=社員が辞めない会社」だと思いこんでいたのですが、本当はそうじゃない。社員が辞めても、また戻ってきたくなるような魅力のある会社であれば、人の集まる会社といえるはずです。そこに気がついてからは、一度辞めた人にも門戸を閉ざさないようにしています。じつはいまの人事部長は2回、退社しているのですが、いろいろと経験を積んでから弊社に戻り、辞める前以上に大活躍していますよ。

辛い経験から学ぶことも大きいですね。

七村会長: そうですね。じつは僕は毎年のように大きな失敗をしているのですが、そのタイミングには恵まれているんです。資金繰りに失敗したのは創業後すぐだったし、社員の退職について悩んだのも、まだ社員が少なかったころ。あのとき失敗していなければ、何も気がつかないまま、いまになって取り返しのつかない失敗をしていたかもしれない。いい時期に失敗を経験したからこそ、自分を成長させることができたような気がします。

自分の人生の主人公は自分
辛い境遇を乗り越えて、ビジネスパーソンとしての成功を手中にした七村会長に、過去との向き合い方や決断のコツについてお伺いしました。