明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

株式会社ロッテリア
代表取締役社長
篠崎真吾

●篠崎真吾(しのざきしんご)1962年、静岡県生まれ。一橋大学法学部在学中に学生ベンチャーを立ち上げて、88年中退。公認会計士の資格を取得後、中央監査法人国際部、マイクロソフト管理本部、マーズ/マスターフーズ財務経理部長・人事本部長を経て独立。05年、企業再生専門会社のリヴァンプに入社。06年、ロッテリアの代表取締役社長に就任して経営の立て直しを図る。
(株)ロッテリアWebサイト http://lotteria.jp/

第11回 前編

公認会計士からロッテリアの社長に

会社の基礎体力の部分を担う財務のプロ
篠崎社長は、企業再生会社のリヴァンプからロッテリアに入られたそうですね。

篠崎社長: 05年11月に企業再生を専門に行うリヴァンプとロッテリアが資本提携し、経営改革に乗り出すことになりました。今年1月には、リヴァンプから私を含めて3名がフルタイムで入り執行にあたっています。今後、3〜5年をメドに経営再建を目指します。

財務の専門家ある篠崎さんが社長に就任された経緯を教えてください。

篠崎社長: 再建に取り組むにあたって、営業やマーケッター、人事など、各分野のスペシャリストでチームを作りました。各部門の中で最初に手をつけるべきだったのが、会社としての基礎体力の部分、財務です。同時に商品開発や店舗改革も必要ですが、いい武器を持っていても、体力がなければ使いこなせません。そこで、ファイナンスの専門家としてチームに参加していた私が社長を務めることになりました。

社長に就任されたときに心がけていたことはありますか?

篠崎社長: 社外からこちらに入ったわけですが、リヴァンプはコンサルタントのように「僕たちが戦略立てますから、そのとおりにやってください」というスタイルではなく、チームで私達も現場の方々と一緒に改革に取り組んでいきますので意識していたわけではありませんが、社内の人と打ち合わせするときは、横に並んで座ることが多かったですね。コンサルだと、テーブルを挟んで向かい合い、問題点を指摘して終わり。私たちは、問題点があったら一緒に改善していきましょうという思いでしたから、自然に同じ目線で話をすることができました。社内の方も、それは感じてくれたと思います。

“食”にまつわる経験を大切にする。
これまで外食産業に携わられたご経験は?

篠崎社長: 実は私を含め、リヴァンプからきた3人は外食産業に携わるのが初めて。私はこれまで監査法人で会計士として働いたり、メーカーの管理部門でキャリアを積んできたのですが、外食産業はまったくの門外漢でした。ですので、生え抜きでハンバーガービジネスをやってきた人たちといいチームを作らないと、何もできないと思っていました。

初めての外食産業に戸惑いは?

篠崎社長: 店舗ビジネスという部分が非常に新鮮でした。店舗ビジネスは、自分たちが決めたことが正しいかどうか、すぐに分かります。たとえば月曜日に会議で決めたことがすぐに現場に反映されて、水曜日か木曜日にはお客様の反応がダイレクトに数字に現れてくる。メーカーはお客様に製品を直接手渡すところまでやらないので、ここまでのスピード感はないし、数字から現場の雰囲気を読み取るのも難しい。管理部門から見ると、その違いが大変興味深かったですね。

外食産業に入って、食に対するイメージは変わりましたか?

篠崎社長: 正直なところ、私にとって食事は栄養やエネルギーを取るためのものでした。だから食べるスピードは速かったし、ファーストフードもとにかくファーストならいいと考えていた。ところが、実際に外食産業の中から見てみると、どうやらそれだけじゃないなと思うようになりました。

というのは?

篠崎社長: 店舗ビジネスでお客様に接するシーンを間近で見てみると、ハンバーガーをお店で食べたり、お持ち帰りして家族と食べたり、その全体の経験を含めて“食”なんだと気づいたんです。そういう意味では、おいしい商品を提供するだけではダメ。私たちには、食べるという経験まで含めて求められているんだなと実感しました。

ちなみにハンバーガーは以前からよく食べられていたのですか?

篠崎社長: 昔からリブサンドは好きです。いまもコンスタントに食べてますよ。本社のすぐ近くに店があるのですが、そこの売上にはけっこう貢献しているはずです(笑) 。

お客様の声と真摯に向かい合う
最近の取り組みについて教えてください。

篠崎社長: 4月から【400 Hamburger Set(フォーハンドレットバーガーセット)】を展開しています。これまでファーストフードはカロリー・栄養バランス面で敬遠されるお客様もいましたが、ハンバーガーとサイドメニューで一般女性の基礎代謝量1日約1200kcalの1食分に当たる400kcal以下におさえて、低カロリー・ヘルシーなメニューを提案。第1弾として、4月25日より『Regular 400 豆腐ひじきバーガー&3種の豆のデリサラダ』を全店で販売します。

ファーストフードで健康というコンセプトは面白いですね。

篠崎社長: 私がこちらに入って最初にやったのが、お客様の声を真摯に聞いてみることでした。そこで意外に多かったのが、ファーストフードにも健康を求めるという意見だったんです。実はいままでも健康志向のメニューはありましたが、どちらかというと健康ブームに乗って、競合他社が出したから当社も、という姿勢が否めませんでした。今回は、お客様の声に真正面から取り組むことによって、いままでとはひと味違うコンセプトの商品ができたと自負しています。

ITベンチャーで起業、失敗、そして会計士に…
後編では、学生時代にベンチャーを立ち上げた篠崎社長が公認会計士になろうと思った理由や、ベンチャーの経験から学んだことなどをお届けします。