明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

オイシックス株式会社
代表取締役社長
高島宏平

●高島宏平(たかしまこうへい)1973年神奈川県生まれ。98年、東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了。在学中に学生ベンチャーでインターネットビジネスを立ち上げ、卒業後はマッキンゼー日本支社に入社。00年6月に独立して、食材販売・食生活サポートを行うオイシックス株式会社を設立し、同社代表取締役社長に就任。
オイシックス(株)Webサイト:http://www.oisix.com/

第10回 後編

起業で大切なのは仲間づくり

仲間づくりには能力より熱意
創業のとき、一番大事にしていたものは何ですか?

高島社長: やはり仲間づくりでしょうね。世の中には、社長になりたい人がたくさんいる。ただ、社長以外の役割で会社立ち上げに参加したいという人は、逆に不足しています。会社には、社長だけでなく、経理に強い人や、みんなを盛り上げるムードメーカー的な人だって必要。仲間の存在なしでは、創業は難しいと思います。

なるほど、仲間づくりは大切ですよね。そこで悩んでいる人も多いと思います。

高島社長: 仲間づくりというと、「自分はコミュニケーション能力が足りないから…」といって諦めてしまう人もいますよね。でも、実はコミュニケーション能力はそれほど重要ではないと思います。大切なのは、「自分は本気でこれをやりたいんだ」という気持ちの部分。熱意を持って取り組んでいれば、自然に人は集まってくるはずです。

高島社長の場合は、どうだったんですか?

高島社長: 私自身は、いい仲間に恵まれたと思います。会社の立ち上げにも、学生のころからの友人やマッキンゼーの同僚がメンバーとして加わってくれましたから。オイシックスは10人で立ち上げたのですが、当時のメンバーのうち8人がいまも一緒に働いています。

“ラブ度”がすべての判断基準
みなさん、仲が良さそうですよね。

高島社長: そうですね。でもよくケンカもしますよ。みんな年代が近いせいもあるのか、なかなか言うことを聞いてくません(笑)。

社長なのに、ですか?

高島社長: みんな、自分が納得しないときはテコでも動かないタイプなんです。だから、社長としてただ一方的に指示を出すだけではダメ。同じ目標を持つ仲間の一人として、なぜこの仕事が大切なのかをきちんと説得しなくてはいけません。でも、納得さえしたら全力を尽くしてくれますから、かえって厚い信頼を置けます。

同じ目標とは?

高島社長: 弊社では、お客様や会社のために行動できているかどうかを示すのに“オイシックス・ラブ度”という言葉を使っているんです。たとえば現場でも役員会でも、「それはラブ度が足りないんじゃないか?」といった議論が交わされます。全社員が、このラブ度を高めようという共通認識を持っています。

ラブ度をもう少し具体的にいうと?

高島社長: たとえば、弊社には会議室がないし、オフィスの間仕切りもきちんとしたパーテーションではなく段ボールで壁を作っています。というのも、お客様のメリットがないことにお金をかけるのはラブ度が低い行為だからです。店舗営業なら六本木ヒルズにお店を構えるのもいいですが、うちはその必要もない。役員会だって、うちはいまだに近所のファミレスです(笑)。

野菜にドレスを着せてあげたい
インターネットを活用することの可能性についてはどうお考えですか?

高島社長: 昨年の夏に商品開発したマンゴープリンは、まさにネットを上手に活用できた一例でした。まず提携サイトであるMSNのグルメコーナーで6000人のお客様の声を集めて、最初にマンゴープリンの味と価格を決定。そこから約2ヶ月かけて商品開発して、そのプロセスをすべてブログで公開しました。その噂がネット上で広がって、発売から10ヶ月で約12万個も売れたんです。これはネット発の商品としては異例な数字で、私たち自身も驚いています。

そのアイデアは、どうやって決まったんですか?

高島社長: 以前から、なにかネットらしいことをやりたいねという話はあったんです。ほとんどノリで決めてしまいました(笑)。

御社の商品を見ていると、「ふぞろいの野菜たち」や「ピーチかぶ」のように、遊び心のあるネーミングが多いですよね。これらもノリで?

高島社長: そうですね。品種をそのまま商品名にしても、あまりおいしそうに聞こえないと思いませんか?たとえば「ピーチかぶ」の本当の品種名は「はくれい」というんですが、それではこのかぶの持つ魅力がなかなかお客様に届かない。そこで桃のようにジューシーなかぶということで、「ピーチかぶ」と命名したんです。

こういったネーミングは誰がつけるのですか?

高島社長: 商品の名前は弊社のバイヤーがつけています。地方には、いい野菜がたくさんあるんですよ。農家の方の思いがいっぱい詰まったね。ただ、それをそのまま都会に持ってきても、おいしさが伝わらない。だから野菜にドレスを着せてあげるような感覚で、名前やキャッチコピーをつけてあげる。それも消費者においしさを届けるための大事な仕事の一つだと考えています。

編集を終えて
やる気に満ちていながら成功できないビジネスマンには「自分の仕事は人が喜ぶことかどうか?」と自問する姿勢が欠けていることが多い。高島社長はその正反対の方で、社名の由来や商品名などからも「お客様が喜ぶこと」を第一に考えていることがよく分かる。インタビューを通じて、オイシックスの成功のカギの一つは、こうした高島社長の姿勢なのだろうと感じた。