明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

オイシックス株式会社
代表取締役社長
高島宏平

●高島宏平(たかしまこうへい)1973年神奈川県生まれ。98年、東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了。在学中に学生ベンチャーでインターネットビジネスを立ち上げ、卒業後はマッキンゼー日本支社に入社。00年6月に独立して、食材販売・食生活サポートを行うオイシックス株式会社を設立し、同社代表取締役社長に就任。
オイシックス(株)Webサイト:http://www.oisix.com/

第10回 前編

食卓に感動をお届けしたい

生産者ではなく消費者の視点で食材を販売
まず事業内容について教えてください

高島社長: 有機野菜をはじめとした安全食材のインターネット通信販売や店舗宅配事業を展開しています。弊社が運営する「Oisix(おいしっくす)」は、食品販売サイトとしては国内最大規模。おかげさまで認知度も高まり、購入経験者数は今年1月に20万人を突破しました。

個性的な社名ですね。その由来を教えてください。

高島社長: 「おいしい」という言葉は、どちらかというと消費者側の視点から見た発想ですよね。従来の食品流通ビジネスは生産者側の論理で語られることが多く、有機野菜の通信販売も、たとえば「いいものを作る会」というように農家側の立場で名前がつけられる傾向がありました。

でも、私たちが目指しているのは、食べる側の視点に立った食品流通ビジネス。オイシックスという社名には、「食卓にあがったときに一番おいしい状態の食品をお届けしたい」という私たちの思いが込められているんです。

会社を辞め起業するのは自然な流れだった
昔から起業したいという夢をお持ちだったんですか?

高島社長: 会社を経営するかどうかは別として、とにかく企画のリーダーになりたいという気持ちは、中学生のころから漠然と持っていました。大学院生のときに立ち上げた学生ベンチャーもそういう気持ちの延長線上でした。

学生のときの会社ではどんなことをされていたのですか?

高島社長: インターネットのなんでも屋です。会社といっても、実態は会社形態をとったサークル。だからきちんとした事業計画もなかったし、その会社で儲けようという気持ちもまったくない、遊び感覚に近いものでした。ただ、実際にやってみると社長業もなかなか面白いものだと思い始めました。

その後、マッキンゼーに入社されたわけですが、ずっと起業には興味を持ち続けられていたのですか?

高島社長: はい。週末には仲間と集まって、何かで起業したいねという話はしていました。その内、野菜のインターネット販売というアイデアが出たので、実際に仕入れに行ったり、いろいろな仲間に声をかけて人を集めていたんです。気づいたらもう営業を始められる体制ができていて、仲間に「あれ、まだおまえサラリーマンなの?」って言われて、慌てて会社を辞めたんです(笑)。

では、会社を辞めるときは悩まなかった?

高島社長: そうですね。先にやりたいことがあって動き出していたので、会社を辞めるのもごく自然な流れでした。正直にいえば、退社の決断をいつ下したのか、はっきりと覚えていないほど。それくらい自然なタイミングだったと思います。

インターネットだからこそのサービス
現在はどういった商品を取り扱われているのですか?
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高島社長: 野菜が約150商品、それ以外のお肉・お魚・惣菜商品が約1050商品で、約1200商品を常時揃えています。食品は季節によって入れ替わりがあるので、年間だと約2000商品の取り扱いになります。売れ筋は、やはり野菜です。商品数では全体の1割前後ですが、売上ベースでは全体の3〜4割を占めています。

そもそも野菜に目を付けたのはなぜですか?

高島社長: 食品流通ビジネスで、最も取り扱いが難しいのが野菜なんです。まず、野菜の美味しさには明確な評価基準がないので、取り扱うには目利きの実力が必要になります。また、野菜は運び方や保管の仕方で賞味期限が変わってしまうため、物流の構成も難しい。

一方、主婦の方にスーパーを選ぶときの基準を聞いてみると、野菜の良し悪しで選ぶという声が圧倒的に多いんです。つまり、取り扱いが難しい反面、食品流通にとって基礎になる食材が野菜だといえます。どうせ食品流通をやるなら、難しいところからチャレンジしようということで、まず野菜20品目からこのビジネスをスタートさせました。

野菜を売るにしても、いろんな方法がありますよね。なぜインターネットで販売しようと考えたのですか?

高島社長: 食べ物って、舌で味わうだけじゃなくて、脳で食べている部分があるじゃないですか。たとえば、「このトマトは、この生産者が、こういう思いを込めて、こんな苦労をしながら育てて、その結果、こういう味の違いがある」という物語とセットになると、ただ食べるときよりも感動が大きくなりますよね。私たちはその感動を重視しているのですが、店頭やチラシでは、これだけ多くの情報量を伝えきれない。食べ物と物語をセットにしてお届けしてようと思えば、やはりインターネットが有効だと思うんです。

起業で大切なのは仲間づくり
友人ら数人と立ち上げた会社を、国内最大規模の食品販売サイトにまで育て上げた高島社長に、起業の際に最も大切だという“仲間づくり”について語っていただきました。