明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

株式会社アイル
代表取締役社長
岩本哲夫

●岩本哲夫(いわもと・てつお)1955年大阪府出身。大学卒業後、大塚商会に入社。同社で販売管理システムの営業となり、トップセールスとなる。90年同社を退社し、翌91年に株式会社アイルを設立。事業展開のみならず、社員教育に力を入れ、独自の企業文化を築き上げる。「企業文化作り」や「営業戦略」「企業の組織力強化」についての講演実績多数。

第72回 後編

社会人に求められる「素直さ」の価値とは?

企業ポリシー「FREE, LOVE & DREAM」
最初5人だった会社も今では350人近くの社員数を抱え、売上も大きく伸びています。成長の秘訣は何だとお考えですか?

岩本社長:創業から今まで、いつも順調だったわけではありません。例えば95年は、売上が前年割れしてしまいました。

その時、原因は何だろうと考えました。パソコンの価格が下落した、バブルが崩壊したなど、外的な要因ももちろんありましたが、「それだけではないのでは?自分にも問題があるのでは?」と、改めて振り返ってみました。そこで気づいたのが、何でも自分でやってしまうという創業時のスタイルに問題があるのでは?ということです。確かに自分でやってしまったほうが楽なことは多くあります。しかし、それでは会社全体としての底上げにはつながりません。

人は何かを任されたとき、権限が広がったとき、やりがいを感じるものです。ですので、どんどん権限を委譲し、社員が自律し、自分たちの手で業績を伸ばそうと考え、そのために努力できるように変えました。同時に、新卒採用も始めたこともよい刺激になったと思います。

企業ポリシーに「FREE, LOVE & DREAM」を掲げていらっしゃいますが、どのような想いがこめられているのですか?

岩本社長:何よりも大切なのは人間性。それぞれの持ち味を引き出すことができる自由(FREE)な企業を作り、取引先に対しても裏表のないオープンな環境で信頼(LOVE)しあうこと、そして社員全員が夢(DREAM)をもてる。そんな企業であり続けることを目標にしています。

悔いの残らぬよう生きるには?
今企業のトップとして、どのようなことを心がけていらっしゃいますか?

岩本社長:まずなにより、創業当時から変わらない「ガラス張りの経営」ということです。そのための手段の1つとして、「月報会議(月次報告会議)」を毎月必ず、全社員参加で実施しています。ここでは私が直接、会社の現状を報告したり、活躍した社員の紹介などを行っています。

創業から15年、この月報会議は欠かしたことがありません。この会議により、アイルという会社の進むべき方向を全社員が共有することが可能となり、だからこそ、それぞれの社員が自律して、やるべきことをできるのだと思います。

また、社員の日誌に目を通し、時にはコメントをつけたり、社長面談を実施したり、社員との距離を縮めようと考えています。「社長だから何でも正しいとは限らない。違うものは違うといってほしい」というのもよく社員に言っています。

逆に社員に求める資質は?

岩本社長:素直であることですね。人の意見に耳を貸せる度量のあるといっても良いと思います。もちろんそれは、何でも人の意見に流される、というわけではありません。しかし、「自分が最高」と慢心している人は成長しないと思いますし、私は「人(社員)の成長=企業の成長」と考えていますので、アイルという会社の成長のためにも、自分に慢心しない素直さを社員に求めています。

最後に読者にアドバイスをお願いします。

岩本社長:人生は1回です。悔いの残らないよう、生きることが大切です。では、そのためにどうしたらよいのか?一度、とどまって「このままでいいのか?新しいことにチャレンジするべきなのか?」と振り返ってみるのもよいでしょう。タイミング的には30代がベストだと思います。

なぜなら、大学を卒業して就職するまでは、「学校に行くのが当たり前だ。就職するのが当たり前だ」といった風に、世間やみんなの流れに従っていた部分があると思います。しかし、30代はある程度の経験を積み、初めて自分の意思で人生を決めることができるタイミングだと思います。

なにも、かならず転職や起業する必要はありません。しかし、一度立ち止まって、「このままでよいのか?」と考えてみてください。結果として、同じ仕事を続けることになるかもしれません。でも、自分でよく考えた結果であれば、後から後悔することもないでしょう。