明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

株式会社jig.jp
代表取締役社長
福野泰介

●福野泰介(ふくのたいすけ)1978年石川県出身。99年、福井高専を卒業後、00年に高専時代の先輩に誘われ有限会社シャフトの取締役に就任。翌年、有限会社ユーエヌアイ研究所を設立。03年に株式会社jig.jpを設立、代表取締役社長兼開発責任者に就任。同社の携帯電話向けフルブラウザ「jigブラウザ」は高い評価を得ている。

第39回 前編

便利で快適なアプリケーションを作りたい

社名「jig」の由来は?
最初に御社の事業内容をお聞かせください。

福野社長:携帯電話に関するアプリケーションの企画・開発・販売の販売です。具体的には大きく分けて3つ。1つ目はPCサイトを携帯電話で快適に見られるアプリ「jigブラウザ」です。最近では携帯電話にフルブラウザが標準装備されていますが、jigブラウザはアプリですので、プラグインにより、メール機能やリモコン機能などを自由に追加できるのが特徴です。

2つ目は「jigムービー」です。これは携帯電話で長時間の動画を配信できるプラットフォームで、動画配信を行っている企業向けに販売しています。3つ目は「jigデスクトップ」です。これはjigブラウザのプラグインの要素のみを取り出したもので、ドコモの公式メニューです。

色々と新しいサービスをリリースされていますが、そのときに重視していることはなんですか?

福野社長:携帯電話は1人が1台持つ最も身近なインターネット端末です。生活に深く密着し浸透しています。しかし、パソコンと比べれば処理能力などで劣ります。ですので、いくら高機能でも、動作が遅くてユーザーがイライラするようなものは使われません。そこで、「軽快さ」「サクサク動くこと」が大切になります。

社名やサービス名に使われている「jig」の由来をお聞かせください。

福野社長:先ほども申し上げたように、「軽快さ」を重視していましたので、社名もそれを活かしたいと思っていました。そこで、近くにあった電子辞書で「軽快」を全文検索してみて、引っかかった語句の中で一番短い単語がjigだったのです。意味を見てみると、アイルランドの伝統的なステップダンスの一種で、テンポが速く軽快なものだということでした。

また、「jig」は、モノづくりの際の補助製品という意味でも使われているようなので、便利なツールを作りたいという私の思いにもピッタリと合っていました。

そこで、すぐその場で、「jig.jp」でドメインを申請し、社名にしました。IT企業といえば、「.com(ドットコム)」が真っ先思い浮かびますが、「アメリカ発ではない日本発のITがあってもいいんじゃないか」と思い、ドメインは「.com」ではなく「.jp」にしました。

小学3年で気付いたプログラムの魅力
現在も、開発責任者としてアプリケーションの開発に携わってらっしゃるのですよね。

福野社長:はい。本社は東京なのですが、開発センターは福井県の鯖江市にあり、私は福井に在住し、普段は開発センターに常駐し開発を続けています。

ご自身がプログラミングに興味を持たれたきっかけはなんだったのですか?

福野社長:最初にパソコンに興味を持ったのは小学3年のころでした。当時はみんなファミコンをやっていて、私も例外ではなくスーパーマリオなどにはまっていました。そのころ、友達がファミコンに接続すると簡単なプログラミングができる「ファミリーベーシック」を持って私もそれがほしくて親にねだりました。しかし、それとは違うMSXというのを買ってきてくれました。

MSXとは、簡単にいえば家庭用のテレビにつなげられる安価なパソコンのようなものです。当時、MSXに関する子供向けの書籍もたくさんありましたので、図書館で借りてきて独学でプログラミングを覚えました。プログラミングの過程も、また指示通り動くこともとても面白く、そういった話を中学の先生にすると、高等専門学校に進むことを勧められ、高専の電子情報工学科に進学することになりました。

高専に進んだことが今に大きく影響しているのではないでしょうか?

福野社長:元々、プログラミング自体は好きだったのでゲームを作っていたのですが、なんとなく「自分の作りたいものと、売れるゲームは違うんだな」と感じていて、それを仕事にすることに疑問を感じていました。「どうしてドラクエがこんなに売れているんだろう」とか思っていましたし。

それが、高専の研究会というところで、自分が作ったプログラムが使われて「役に立っているんだ」と実感することができました。

その後、起業される経緯をお聞かせください。

福野社長:しばらくはアルバイトや契約社員として仕事をしていました。しかし、主な業務はカスタマイズ。新しく何かを作る、というものではありませんでした。

そんな時、高専時代の先輩から起業を誘われ、00年に有限会社シャフトを設立しました。技術担当取締役という役職だったのですが、ここでも主な業務はカスタマイズの仕事でしたので不満がつのり、自分の好きなものを研究開発するために再独立しました。

予想を超える反響の「jigブラウザ」
独立でご希望通りの仕事ができるようになりましたか?

福野社長:色々と仕事も増えてきてスケールが大きくなると、また前と同じような状況になり、危機感を感じるようになりました。そこで、これまでのBtoBではなく、 BtoCでやってみようという気になり、株式会社jig.jpを立ち上げました。 BtoBの場合、企業相手ですので、スパンが長くリソースも大きくなりがちです。一方、一般ユーザーを対象とするBtoCの場合は、ユーザーの声を吸い上げ、どんどん新しいものを作ることが可能です。ユーザーの意見が直接くるのはやりがいにつながります。たくさんくると大変は大変ですが、やはり貴重なものです。

「jigブラウザ」は、予想以上の反響があったのではないでしょうか。

福野社長:はい。たぶん、皆さん、軽快でないアプリにイライラしていたんじゃないでしょうか。私もそうでした。「携帯の可能性はこんなものじゃない」と思っていましたので、同じように感じてくださっていた方に通じたのではないでしょうか。

携帯電話からPCサイトが閲覧できるjigブラウザ
福井・鯖江市をシリコンバレーに
現在も福井在住で、開発を続ける福野社長に、「鯖江市をシリコンバレーにしたい」という夢や、 社長として心がけていることなどをお伺いしました。