明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

サイボウズ株式会社社長
青野慶久

●青野慶久(あおのよしひさ)1971年、愛媛県出身、大学卒業後、松下電工に入社し、その後26歳のときにサイボウズ前社長の高須賀宣氏らとともに、97年同社を松山市に設立し、副社長に就任。05年に社長に就任した。同社は06年に東証一部に上場を果たす。

第34回 後編

やりたいことより今やることを大切に

多くの人が長く働く会社にしたい
組織作りで心がけてらっしゃることはなんですか?

青野社長:「多くの人が長く働く」ということです。 多くの人というのは多種多様な人ということ。ベンチャー企業ですと、少数精鋭のできる人が集まるというイメージがありますが、そうではなく、いろんな人に来てほしい。そして、その人たちが長く働くことでノウハウがたまっていくのが理想です。

トヨタをイメージしていただければ分かりやすいかも知れません。トヨタにはものすごく優秀な人もいます。しかし、それだけではなく、いわゆる普通の社員もいますよね。そういった人たちが、長年働くことで、例えばエンジン作りのプロフェッショナルといった形で、会社を支えています。

私はサイボウズは便利なグループウェアを作り続けるモノづくりの会社だと思っていますので、トヨタのような組織を目標としています。

そう考えるようになったのはいつ頃ですか?

青野社長:数年前、業績はいいのに、どんどん人が入れ替わるという状況がありました。確かに業績はいいけど、それでは楽しくないし心地よくない。だから多くの人が長く働く会社にしようと思いました。

他人依存ではなく、自分依存に
社員にはどのような能力を求められていますか?

青野社長:今年は「自立」をテーマに掲げています。他人依存ではなく、自分依存。例えば、上司に仕事をやれと言われたとき、「言われたからやる」ではなく、「自分がその仕事を『受ける』と選択した」と言える人材になってほしいと思っています。そこに「受けない」という選択肢もあるわけです。その上で、自分で選択して仕事をしているのだという自覚を持ってもらいたいです。

逆に社長として心がけられていることは?

青野社長:真剣さですね。会社の成長のために、命を懸けるという姿勢です。これまで会社はなんとなく大きくなってきましたが、真剣さが足りなかったかもしれないと反省しました。

例えば、「課長、なぜこの仕事をやらなければいけないのですか?」と聞かれて「部長に言われたからだよ」なんて答えていたら、真剣さがないと見透かされます。社員はそうした姿勢をよく見ているものです。ですので、今年は社員に私の真剣さが伝わるよう心がけたいと思っています。

会社としての今後の目標は?

青野社長:世界で一番使われているグループウェアを作ることです。儲けではなく、いかに多くの方に使われて便利だと言われるのか、それが大切です。

ただ上場企業として、利益を追求しないわけにもいきませんよね?

青野社長:もちろんです。ただ、我々は儲けるためなら何でもするという集まりではありません。いわば、甲子園という目標に向かって集まった野球チームみたいなものです。便利なグループウェアを作って、それをできるだけたくさんの人に使ってもらいたい、それを目標にしているのです。それに、その目標が達成できれば自然と儲けもついてくるでしょう。

限られた時間を有効に使う
最近はお忙しいですか?

青野社長:そうですね。一般的にみれば忙しいということになると思います。ただ、1日は24時間しかありませんので、一定以上に忙しくなることはありません。

限られた時間を有効に活用するため、何か工夫をされていますか?

青野社長:例えば会社の近くに住んで移動時間を短縮するなど。あとは、便利なツールを使うことですね。ただ最近、手帳だけはアナログに戻りました。電子手帳は使いづらいので…。

業務の効率化に役立つツール数多く作っている会社のトップが、手帳を愛用しているというのはちょっと意外な感じもしますね。

青野社長:手帳にはスケジュールは書き込んでいませんが、メモ帳として利用しています。パソコンも便利は便利なのですが、デジタルでは結局メモをしても振り返って見ることはないんですよね。

デジタルにはデジタルの、アナログにはアナログのよさがあるんですね。

青野社長:そうです。ミーティングも同じだと思います。直接会わなくても情報の共有はできますが、やっぱり雰囲気やトーンなどは会わないと伝わらないものです。

最後に読者にメッセージをお願いします。

青野社長:よく「やりたいことが見つからない」という声を聞きます。でも正直なところ、私もやりたいことなんて分かりません。ただ今の状況を受け入れ、今やっていることがもしかしたらやりたいことなのかもしれない、と全力で頑張っているだけです。グループウェアも、そもそもは会社から担当を任せられ、それをやっているうちに、「インターネットを使えばもっと便利になる」と思ったのがきっかけです。皆さんもまずは今やっていることを頑張ることを心がけてください。

編集を終えて
モノづくりも昔から好きだったといい、それが今のモノづくりを大切にする企業精神に通じているという。青野社長は「技術面にまで口を出してめんどくさいと思ってる社員もいるかもしれませんが」とおっしゃっていたが、そうした頼れる社長だからこそ、サイボウズという会社も大きく成長し続けているのだろう。