明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

株式会社オールアバウト
社長
江幡哲也

●江幡哲也(えばたてつや)1965年神奈川県出身。リクルートにて、マーケティングデザイン室、キーマンズネットグループ、経営企画室兼次世代事業開発グループエグゼクティブマネジャーなどを歴任。2000年に同社を退社し、株式会社リクルート・アバウトドットコム・ジャパンを設立し、社長兼CEOに就任。04年に社名をオールアバウトに変更し、05年ジャスダックに上場を果たす。

第33回 後編

アイデアではなく実現の時代

「来週にはつぶれる…」と思った起業当初
起業当初は苦労も多かったのでは?

江幡社長:会社を設立したのが、00年。まだITバブルのころでした。それが実際にサービスを開始した01年にはバブルが崩壊し、状況が180度変わり、当初の計画が狂ってしまいました。

しかも、私が考えていた事業は人が中心、手作りで大きくしていくものですから、収益をあげられるようになるまで時間がかかります。ですので、サービス開始から2年ほどは、来週つぶれてもおかしくない、という状況が続いていました。

それを乗り越えられた要因は?

江幡社長:意思を持ってやりぬくことだと思います。

今は「アイデアの時代」ではなく、「実現の時代」です。面白いアイデアだけならいくらでも出せます。そこで止まることなく、意思を持って実現する努力をすることが求められているのです。

とはいえ、努力してもうまくいかないこともあるのでは?

江幡社長:もともとの筋が悪いからうまくいかない事業もあると思います。しかし、筋が悪くなければ実現に向け、わき目も振らずやりきることです。

ただ、やりきるといってもいくらでも時間をかけてよい、ということではありません。会社であれば資本金が尽きるまでなど、期限があります。その猶予期間のなかでやりきることが大切です。

「1つ上の視点」を持つことの大切さ
社長として心がけていることはありますか?

江幡社長:明確なビジョンを示すこと。そして現場が生き生きと仕事できる環境を作ることですね

社員に求められることは?

江幡社長:例えば、社員ならその上の係長、係長なら課長、課長なら部長、部長なら社長、社長なら株主…といった「1つ上の視点」を持つことです。その視点を持つことにより、自分が今している仕事の意味を理解し、上司の判断の背景を知ることができます。そうすれば仕事にやりがいを感じることができるでしょう。

江幡社長はやりたいことを見つけ起業されましたが、なかなか自分のやりたいことが見つからない方も多いと思います。

江幡社長:見つからないのであれば、まずは目の前のことに一生懸命になることです。大学を卒業して就職するのは22歳、23歳のころですよね。働いたこともないその歳で、本当のやりたいことなんて分らないでしょう。だったら、目の前のことに一生懸命になる。それでいろいろなことを経験しているうちに、自然と、自分が一番生き生きとできる場面を見つけられるはずです。あとは、それに素直になればいいのです。

「情報で世直し」という志で
著書に『アスピレーション経営の時代』がありますが、「アスピレーション」とはどういうことなのでしょう。

江幡社長:「志」のことです。やりたいことがあり、それを実現しようとすると、様々なハードルが現れます。想定外のこともいっぱいあるものです。それはやる前から覚悟しておくべきことです。そしてそれをクリアするためには強い「志」が必要なのです。

江幡社長の「志」とは?

江幡社長:「情報で世直しをする」ということです。信頼できて本当に役に立つ情報を提供することで、個人の自立を助ける。そうすれば、社会全体が元気になるはずと考え、その実現を目指しています。

その志があったからこそ、オールアバウトを立ち上げ、社長になる決意もできたのです。

その志は起業当時から現在まで一貫しているわけですね。

江幡社長:はい。企業のトップがビジョンをぶれさせないことは、とても大切だと思います。社員にしっかりとしたビジョンを示すこともトップの重要な役割だと考えています。

ですから、週、3ヶ月、1年といった区切りごとに、改めてビジョンを共有できる機会を持つようにしています。上場もし、会社も大きくなってきました。ですので、こうした意識的にこうした機会を持つことが大切だと感じています。その中で、社員が「やるべきこと」を認識してもらえればと思います。

技術が発展しても大切なのは“人”
インターネットビジネスで大切なことはなんだとお考えでしょうか?

江幡社長:私は通信自由化の年のころのことをよく覚えていますので、そのころから比べても技術は発達しましたし、サービスも多様になりました。

しかし、肝心なことはその技術を使って「何をしたいのか、何を伝えるのか」ということだと思います。つまりコンテンツです。ですので、いかにコンテンツを作るのかが大切になるでしょう。

その際、忘れてはいけないのが、コンテンツの元は人間だということです。オールアバウトのコンテンツも、専門家であるガイドあってのものです。専門知識を持つ人がコンテンツを作っているからこそ、ユーザーが求めるメディアが出来上がるのだと思います。ですので、そうした人を育て、ネットワークを作ることを心がけています。

技術が発展しても、やはり基本となるのは人ということですね。

江幡社長:そうです。うちのサービスは書き手、ガイドがいるからこそのものです。ですので、専門家の方が参加していただける環境を整えること、そしてパートナーとしての関係を築くことを心がけています。

それが結果として「世の中のためになる情報」の提供の実現につながるわけですね。

江幡社長:そうです。ビジネスである以上、収益などの面も考慮しますが、最終的な目標はそこです。あらゆるユーザーにとって有益なメディアになるよう、質の高さと分野の幅広さを両立させたいと思っています。

「やりたいこと」をするためには?
「やりたいことをやればいい」という風潮もありますが。

江幡社長:仕事には「やりたいこと」「できること」「やるべきこと」があります。「やりたいこと」をやるためにはそのための能力を伸ばす、つまり「できること」を増やさなければいけません。そして「できること」は「やるべきこと」を確実にこなしていくことで増えていくのです。つまり、「やるべきこと」に一生懸命になることは、「やりたいこと」をやるために必要なことなのです。

それに、人間誰しも何か成果が出たら、それがたとえ会社から言われた「やるべきこと」であっても嬉しいですよね。そういうやり遂げた喜び、達成感を味わってもらいたいと思います。

御社の将来像についてお聞かせください。

江幡社長:まだ目標達成の1合目あたりだと思っています。あらゆる生活場面で信頼できる情報がほしいと思ったときに、「All Aboutを見よう」と思うようなメディアビジネスを作っていきたいですね。今はそのための仕込みの時期だと思っています。

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