明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

デジタルハリウッド株式会社
代表取締役社長
藤本真佐

●藤本真佐(ふじもとしんすけ)1967年千葉県出身。青山学院大学経営学部在学中、マーケティング会社を設立。その後、デジタルハリウッド設立に参画。94年、株式会社アイ・エム・ジェイを創業、社長に就任。99年、兼業で株式会社ツタヤオンラインを設立し、社長に就任。02年デジタルハリウッドに復帰し、社長兼CEOに就任、現在に至る。YEO(青年起業家機構、現EOジャパン)日本支部第9期会長などを歴任。

第31回 前編

いつも一生懸命であることの大切さ

国内初「株式会社による大学院」の設立
会社概要をお聞かせください。

藤本社長: 事業内容は大きく3つに分けられます。1つ目が学生から社会人まで幅広い層を対象にした専門スクールの運営。2つ目が、文部科学省認可の4年制大学と大学院の運営。3つ目が、法人向けのソリューション事業です。

一番最初に手がけた専門スクールの運営は、今年で13年目になります。その間、ウェブ、コンピューターグラフィック(CG)のデザイナーやクリエイターを数多く輩出してきました。

株式会社による大学院の設立は国内初だったそうですね。

藤本社長: はい。04年にまず政府の構造改革特区(教育特区)を活用して大学院を設立し、続いて05年に4年制大学を設立しました。

以前から大学を作りたいと考えていましたが、株式会社が学校を設立するのは制度的に難しかったので、何とかできないか方法を探していました。そんなときに構造改革特区の話を聞き、これを活用すればできるかもしれないと文部科学省の担当の方に働きかけ、設立にこぎつけました。

起業当初から「教育」という分野を意識されていたのですか?

藤本社長: 私は大学在学中、学生起業家として会社を運営していたのですが、その時の事業内容は全く教育とは関係のないものでした。最初は学生サークルから始まったもので、様々なサークルの取りまとめや幹事業務を請け負ったりしていました。

そのうち規模が大きくなり、スタッフも忙しくアルバイトもできない状況になりました。それにイベントをやるにも企業の協賛を得るためには、学生サークルではなく会社のほうがいい、ということになり、会社を作ることにしたのです。これが私の最初の起業経験でした。

突然の申し出でツタヤオンライン社長就任
その後、デジタルハリウッドの設立に加わるわけですね?

藤本社長: はい。たまたまあるとき、取引先の方に「これからはCGを作ることができる人を育成する必要がある。私が教育したいが、どこかいい学校はないか」と相談を受けました。すると偶然、その数日後に別の取引先の方に、「CGの教育をやりたいが、教えられる人がいない。もし知り合いにいい人がいたら紹介してほしい」と言われました。そこでこの2人を引き合わせたのが、デジタルハリウッド設立のきっかけです。最初はとりあえず引き合わせるだけ、と思っていました。

というのも、私は「学校」「パソコン」「冠婚葬祭」が「三大嫌いなもの」だったのです。ですから、そのうち2つに当てはまる事業には参加するつもりはなかったのですが、誘われ、口説かれ、いつの間にか参加することになってしまいました(笑)。

それでも最終的に引き受けられたということは、ご自身もCG教育の大切さを感じられていたということですか?

藤本社長: そうですね。CGをはじめとするパソコンの可能性は感じていました。当時、『ジュラシックパーク』という映画がちょうど公開されたころでした。それを見て、「CGで映画ができる。セットがなくても、スタッフが全員1つの場所に集まらなくても、パソコンがあれば映画ができる」と大きな衝撃を受けました。デジタルハリウッドという社名・学校名も、「ネットワーク上に映画の都であるハリウッドを作る」という思いが込められています。

デジタルハリウッド設立後は、ウェブプロデューサーとしても活躍されていましたね。

藤本社長: はい、デジタルハリウッド設立の翌年にコンテンツ事業部を分社化しアイ・エム・ジェイを設立し、社長に就きました。その後、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の増田宗昭社長と一緒に「ツタヤオンライン」を立ち上げました。

ツタヤオンラインを立ち上げる経緯は?

藤本社長: 増田社長がIT、エンタメ業界の人を集めてアイデアを聞くための場を設けられたのですが、IT業界を代表して参加予定だった方が、急に出席できなくなり、代わりに私が参加することになりました。それをきっかけに、「TSUTAYAのポータルサイトを作ったほうがいいですよ」と提案し、増田社長もそのアイデアを気に入ってくださり、具体化に向け動き出しました。

その後、増田社長からツタヤオンラインの社長に就任するよう申し出を受けました。突然のことでしたのでいろいろと迷いましたが、最終的にはお引き受けし、99年に社長に就任しました。

一期一会の大切さ
迷いながらも引き受けられたのは?

藤本社長: 言われたものを作るという仕事に疲れていた、というのもありました。何か新しい、大きなことをやってみたいという気持ちもあったのでしょうね。

ツタヤオンラインの立ち上げに成功し、その後は改めてウェブプロデューサーなどマネジメント職を育てたいと思い、02年にデジタルハリウッドに復帰しました。

デジタルハリウッドの設立もツタヤオンラインの立ち上げも、偶然のように思える出会いを、確実に形にしていらっしゃるようですね。

藤本社長: 成功しているのはごく一部、その何倍も失敗がありますよ(笑)。

ただ私は一期一会ということを大切にしています。来るものはめったなことがないと拒まない。その中のいくつかが、こうして成功に結びついているのではないでしょうか。

いい加減なことをしていると、いつか自分に返ってきます。その場、その場でいつも一生懸命であることが大切だと思います。

学校は優秀なコーチであるべき
ツタヤオンラインの創業をはじめ、チャンスを自分のものにしてきた藤本社長に、仕事をする上で心がけていることを伺いました。また、起業や転職を考える読者へのメッセージもいただきました。