明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

GMOインターネット
社長
熊谷正寿

●熊谷正寿(くまがいまさとし)1963年長野県出身。27歳のときに株式会社ボイスメディアを設立。95年にはインターネット事業に進出し、社名をインターキュー株式会社に変更。99年には独立系ネットべンチャーとしては初めて、JASDAQに上場を果たす。05年、GMOインターネットに社名を変更し、東証一部に上場。現在は同社代表取締役会長兼社長。米ニューズウィーク誌の「Super CEOs(世界の革新的な経営者10人)」に選ばれるなど、その経営手腕は国内外で高く評価されている。

第30回 後編

手帳に書き込む夢、目標

パソコンではなく手帳にこだわる理由
システム手帳に関した著書もあり、スケジュール管理の達人というイメージがありますね。

熊谷社長: 私の手帳にはその日の予定がびっしりと書かれていて、真っ黒になっています。手帳に書き込むことで、瞬間瞬間、何をやるべきなのか俯瞰(ふかん)できるのが手帳のメリットでしょう。

ただ、手帳というのは予定を書き込むだけのものではありません。夢や目標、思ったことや決めたことを書くことが大切なのです。手帳に書くことで、自分を律することができます。

手帳を活用するようになったのはいつ頃ですか?

熊谷社長: 元々忘れっぽいところがあり、メモを書く習慣がありました。手帳につけるようになったのは20歳くらいの頃です。その当時、僕は1人4役をこなしていました。高校を中退し、父の事業の手伝いという社会人として、20歳に結婚していたので夫業、それで娘ができて父親業、勉強するために学生もやっていました。

本当に時間も無い、お金も無い、何も無いという生活を送っていました。苦しくて苦しくて、僕は本当はどうなりたいんだろう…そう思って将来やりたいことや欲しいものを手帳に書いてみたのです。すると、それまでもやもやとしていた心のつかえがスーッと取れて、視界が明るくなりました。暗いトンネルの中で一筋の光を見つけたような感じでした。

自分にとってそのときが1つの人生の転機だと思います。手帳に書くことによって、今やるべきことがはっきりとしました。

成長するDNAを埋め込みたい
パソコンに入力しておく、というのでは駄目なのですか?

熊谷社長: パソコンは1つの情報をたくさんの人間で共有したり、一斉に公開したりするのには非常に便利なツールだと思います。でも、日常生活での接触回数や、すぐに見られるよう手元に置いておける手軽さを考えると、夢や目標を書き込むのは紙でないといけません。そして繰り返し繰り返し見ることが大切なのです。

大きな企業グループのトップとしてどういったことを心がけられていますか?

熊谷社長: 「いなくてもいいトップ」ですかね。トップは大切ですし、いなくていいというと語弊があるかもしれません。ただ、トップだけが注目されている組織では駄目ではないかと思っています。

人間誰しも寿命があります。でも会社は100年単位で成長できる組織になることが必要です。そのために、今のうちに成長し続けるようなDNAを会社に埋め込んでいきたいと思います。

具体的にはどういうことでしょう?

熊谷社長: 社員がトップである私個人ではなく、会社のブランドを意識するようになることが大切です。そうすることで、組織としての急進力が生まれ、会社も成長できるでしょう。

あと、社員にはベンチャースピリットを忘れずにいてもらいたいと思います。大企業病で動きが鈍くなってしまうことだけは避けたい。ほかより10倍早く成長していこうというスピード感を忘れないで欲しいですね。

そのためにも、立候補制度や360度評価など、人事制度でも体制作りを進めています。自分から手をかげて「これをしたい!」と言える社員が評価される仕組みです。

休日は仕事の準備期間
趣味はありますか?

熊谷社長: ゴルフですね。最近はゴルフは経営、そして人生そのものだなと思います。

どういうことですか?

熊谷社長: ゴルフには自らを高めることや人とのコミュニケーションが必要です。そして何より、平常心が大切です。こうしたことは経営や人生に必要ですよね。

では休日はゴルフ三昧?

熊谷社長: いえ、週に1回ぐらいですよ。接待ゴルフも多いですし。

私は休日を仕事の準備期間だと考えています。もちろん休んだり遊んだりすることも大切です。でも休日と仕事を完全に分けてしまって、休みの日は仕事のことは一切考えないというのでは、他の人に差をつけることはできないでしょう。人間、持っている時間は同じです。その中で起業など人と違ったことをしようと思うなら、同じように休んでいてはいけないでしょう。私はそういう風に考えながらこの20年をやってきました。

編集を終えて
子供のころから少林寺拳法や極真空手を習ったり、ウエイトトレーニングを20年以上続けるなど、スポーツマンの一面を持つ熊谷社長。時にはトレーニングの合間に、ジムの中で仕事の打ち合わせをすることもあると、広報担当の方が笑いながら教えてくださった。少しの時間でも決して無駄にしない、そんな熊谷社長の考えがよく表れたエピソードだ。