明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

プログレスインタラクティブ
社長
斎藤一穂

●斎藤一穂(さいとう・かずほ)1964年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科卒業後、米メンター・グラフィックス日本法人に入社。開発エンジニアとして勤務後、マーケティング業務を含めた営業に転属。93年に株式会社アメレックスコーポレーションを設立し代表取締役に就任。96年、有限会社プログレスインタラクティブを設立し、代表取締役に就任。翌年1997年、株式会社となり、現在に至る。

第29回 後編

「見る夢」ではなく「つかむ夢」を

魅力的な人間であり続けたい
社長として心がけられていることはありますか?

斉藤社長: 社員とは仲間であり、パートナーであり続けたいと思っています。また、社員にとって魅力的な人間であり続けたいと思います。

魅力的な人間とは?

斉藤社長: 技術のこともある程度分って、マーケティングも理解でき、業界動向も知っている。それに遊び心もあって、家族も大切にしている、簡単にいうと「この人みたいになりたい」と思われる人間ですね。難しいことですが、それがなくなると社員の心が離れて、会社を辞めていってしまうのではないでしょうか。

そういう面を社員に伝えていくことが大切なんでしょうね。

斉藤社長: はい、社員とのコミュニケーションの中で伝えていければと思っています。

私は仕事をする上でコミュニケーション・スキルが非常に大切だと考えています。「ストレスの8割は自分自身の考えていることに原因がある」という言葉があります。例えば、「こんなこと言ったら相手はどう思うだろう」と考えてストレスに感じる。でも実際話してみたら何の問題もなくスムーズに物事が進む。そういうことはよくあると思います。コミュニケーション・スキルがあれば、こうした無駄なストレスは感じずにすむのではないでしょうか。

子供のころ想像したキャリア・パスとは?
お休みの日は何をしてお過ごしですか?

斉藤社長: 小6の娘と小5の息子と過ごすことが多いですね。後は、走ったり、少年野球のコーチをしたり体を動かしています。元々運動が好きなので。

少年野球ですか。お子さんも参加されてるのですか?

斉藤社長: はい。中学校に入れば好きな部活を選んでもいいけど、小学校までは少年野球を好きで続けるようにと言っています。

なぜ少年野球を?

斉藤社長: 団体行動や社会との交わりを学ぶ貴重な機会だからです。少年野球に参加していると、自分の親でない大人、例えば友達の親に怒られることもありますよね。それはとても貴重なことではないでしょうか。そうした機会を通じてなぜ怒られるのかを考えることができます。最近はなかなかそういう機会はないですからね。そこで礼儀なども学んでもらえればと思い、息子には少年野球を続けるように言ったのです。

小さいころはどんなお子さんでしたか?

斉藤社長: いつも周りを笑わせたいと思っている子供でした。それからいろんなことに興味を持って、疑問をとことんまで突き詰めるタイプでした。

将来何かになりたいという夢はありましたか?

斉藤社長: 明確にはなかったのですが、漠然と今でいうキャリア・パス(仕事での能力を高めていく過程・順序)を考えていました。その結果、人が集まっている組織のそれなりの立場にいるという自分をイメージしていました。

組織のそれなりの立場、ということはその頃から社長を目指しているのですか?

斉藤社長: 私は孤独がいやだったので、周りに人がいてほしいと思っていました。加えて、父も経営者でしたので漠然とそういった立場を思い描いていたのだと思います。

ただ明確に「自分で会社をやってみたい」と思ったのは前職のときからです。本当に自由な職場で、かつ何でも自分でやらなければいけませんでした。そこで何でもやっているうちに、会社経営もできるかもしれないという気になり、起業しようと決意しました。先に申し上げたように、インターネットの可能性にも気づいたので、不安よりも期待が大きくなったのです。

「バカ」と言われてもいい
社長になられる前も含めて、仕事をする上で心がけられていることはありますか?

斉藤社長: こだわりを持つことも必要ですが、自分が間違いを犯したときはその非を認めることが大事だと思います。謙虚になるということだと思います。その上で、間違いから何かを学ぼうとするスタンスが必要ではないでしょうか。

人と接するときも同じで、謙虚さが必要です。その人から何かを学びたい、いろいろと話したいという姿勢で接するのです。バカだといわれることもあるかもしれませんが、知ったかぶりをしていては何も学べないし、自分も成長できませんので。

同じ人に接するのでも、こちら側の姿勢によってそこから学べることが変わってくるのですね。

斉藤社長: そうです。みなさんも「この人は苦手だな」とか「あの人は嫌いだ」といった感情を持つことがあるでしょう。でもそれを決めているのは自分自身なのです。意識して嫌いな人を減らしていく。そしてその人といろいろ話したりしていると学べることもきっとあるはずです。

それはなかなか難しいですよね?

斉藤社長: はい、すごく難しいことだと思います。私の場合、いつも目指したいと思うモデルが身近にあったからこそ、そのモデルとしてる人に近づくにはどうしたらいいのだろうとがんばってこれたからできたのかもしれません。だから今は、今度は私が社員に目標を示すことができるよう心がけています。

プライドや偏見が邪魔をすることも多いでしょう。でも、それは甘えではないでしょうか。自分に厳しくすることができれば、必ずできるはずです。

社員に目標を示すことの大切さ
会社の雰囲気はどうですか?

斉藤社長: 会社もだいぶ大きくなりましたので、以前のように全社員が仲良しという感じでもなくなってきましたので。仕事で直接かかわりを持たない人も出てきますからね。

でもその分、それを挽回しようというか、積極的に飲み会を企画するグループもあるようですし、社内サークルのような形でフットサルを行っています。

以前にも述べたように、仕事をする上でコミュニケーションは非常に重要です。会社が大きくなると、社員同士のコミュニケーションが疎遠になってしまうのもある程度は仕方がないと思うのですが、それをそのままにせずよくしていきたいという動きが生まれてくるのはとても嬉しいですね。

ご自身もかっ達な雰囲気をお持ちですから、社員からの人気も高いんでしょうね。

斉藤社長: いやー社員がどう思っているのかは分りませんよ。うるさいオッサンだと思っているかもしれませんし(笑)。それはともかく、仕事の面では社員に対して明確な目標を示すことで引っ張っていきたいと思います。それにはやっぱり自分が頑張っているところを見せないとダメなんでしょうね。

というと?

斉藤社長: 今でこそ何とか仕事が上手くいっているとはいえ、その前にはなかなか表からは見えない努力、苦労も多くありました。汗をかいて努力してこそ、結果があるのです。それはなかなか言葉では伝わらないものではないでしょうか。ですから私自身の頑張りを実例として参考にしてもらいたいです。

自分の作った「型」を壊すことが成長の秘訣
最後に読者にメッセージをお願いします。

斉藤社長: 子供の成長にはゴールデン・エイジ(Golden Age)という時期があるそうです。9歳から12歳のこの時期に神経系が急速に発達し、基本的な能力が決まる時期です。

私は、仕事でのゴールデン・エイジは広く言えば26〜35歳ぐらいに当てはまるのではないかと思います。ちょうどそのころ、仕事にも慣れ新しい刺激がほしくなったり、給与アップを目指したくなる時期ではないでしょうか。

その時に、自分にできることと、できないことをはっきりと見極めてください。

それをよくよく検証してみると、できないと思っていることは、自分が勝手にできないと自分自身を型にはめているだけだということに気づけるかもしれません。 そうした自分の思い込みの型を壊すことができれば、人は大きく成長できるのではないでしょうか。型を壊す手段は色々あるでしょう。もしかしたら会社を辞めて転職をすることかもしれません。そうした型を壊し成長するうちに、新しい目標や夢が見つかるはずです。「見る夢」ではなく「つかむ夢」を見つけて、それに向けて全力でがんばってください。

編集を終えて
よく日に焼けた顔と元気のいいお声のスポーツマンタイプの斉藤社長。一言一言が自信にあふれており、気づけばお話に引き込まれていた。ご自身がおっしゃる「魅力的な人間」そのものという印象だった。こんな斉藤社長が率いる会社だからこそ、次々と新しいサービスを生まれる原動力があるのだろうと納得させられた。