明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

グリー株式会社
代表取締役社長
田中良和

●田中良和(たなかよしかず) 1977年、東京都生まれ。日本大学法学部卒業後、ソニー・コミュニケーション・ネットワークを経て、00年に楽天に入社。オークションやブログ、アフィリエイトなどの企画、開発、運営に携わる。04年、個人サイトとしてSNS「GREE」の公開を開始。同年、楽天を退社し、グリー株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。
グリー(株)サイトhttp://gree.jp/

第14回 後編

自分の好きなことを仕事にする

経営者のイメージが変わった
田中社長は、もともと経営に興味があったのですか?

田中社長: いや、最初はまったく考えていなかったですね。僕が子供のころは、社長は会社のために一生尽くして、60歳ぐらいでようやくなれるというイメージが強かった。正直、当時はそんな生き方をかっこいいとは思えませんでした。

その考え方が変わったのは、なぜですか?

田中社長: 高校生のときにアメリカで「Yahoo!」や「Netscape」が登場したというニュースを見て、経営者に対するイメージが変わりました。若い経営者が社会にインパクトを与える仕事をして、好きな仕事に寝ないで取り組んで、経済的な報酬も大きい。そんな姿を見て、こういう人になってみたいと憧れるようになりました。

では、20代で独立されたときにも迷いはなかった?

田中社長: 楽天の三木谷社長は26歳でハーバードに留学したし、楽天の創業メンバーには25歳で参加した人もいました。仕事は充実していましたが、自分も25歳を越えて、いつまでもここにいるのではなく、もっと可能性を試したいという気持ちが強かった。そのころ「GREE」を1人で運営することに限界がきていたので、僕にとって独立はちょうどいいタイミングでした。

ブログサービスの立ち上げが自信に繋がった
大学卒業後は、まず大手企業に就職されたそうですね。

田中社長: インターネットに関わりたくて、ソニー・コミュニケーション・ネットワークに就職しました。ただ、入社2ヵ月後には規模の違うところへ動き出そうと考えていました。

それはなぜですか?

田中社長: 入社してから気がついたのですが、僕が働きたかったのはインターネット会社ではなく、インターネットベンチャーだった。その会社が良い悪いではなく、僕の志向と合わなかったんです。

それから楽天へ?

田中社長: はい。友人が楽天に勤めていていたので紹介してもらって入社しました。実は最初は営業として入社予定だったのです。ところが入社当日、オークションのプロデューサーが他のサービスに専念することになって、「じゃ、インターネットに詳しいみたいだからキミがやってみるか」という話になって。

そのようなチャンスに出会えるのも、インターネットベンチャーならではですね。

田中社長: 当時、楽天は50人くらいの小さな会社で人手も足りませんでした。その後、ブログサービスを立ち上げたときも、苦手だと思っていたプログラミングを一から勉強して、自分で作ったんですよ。こうした経験が、自分もやればできるんだという自信に繋がったと思います。

目が死んでいる人間にはなりたくない!
オフのときは、どうやって過ごしているのですか?

田中社長: のんびりするのが好きですね。家では、お酒飲みながらゴロゴロしてます(笑)。

そこからオンに切り替えるのは難しくないですか?

田中社長: 意識してオンに切り替えようとしなくても、目的があれば勝手に身体が動きますよ。むしろ難しいのは、オフに切り替えるほうかな。家でゴロゴロしていても、つい仕事のことが気になってしまうことが多くて。

仕事とプライベートの線を引くのが大変ですね。

田中社長: ただ、僕の中では趣味と仕事を無理に分けるつもりはないんです。趣味と仕事を一体化させるというと語弊があるかもしれませんが、自分が興味を持てることを仕事にして、一生懸命働いて楽しむことができれば、それが一番幸せなことですから。

最後に、読者にメッセージをお願いいたします。

田中社長: 目が死んでいる人にはなりたくないなとつねづね思っているんです。人生でもっとも長いのは働いている時間。それなのに、お金のためだといって、いやいや働くのはつまらないですよね。ぜひみなさんにも、自分が本当に打ち込める何かを見つけてもらいたいですね。

編集を終えて
お金を儲けるための手段として事業を起こす起業家も多いが、「好きな仕事を楽しむことにこそ働く意味がある」という田中社長は、ある意味で、その対極にいる経営者。連日、ハードスケジュールで仕事をこなしていても、表情が活き活きとしていて疲れを微塵も感じさせないのも、好きな仕事に打ち込んでいるからなのだろう。楽しむためにこそ手を抜かないという姿勢は、仕事に悩むビジネスパーソンにとって大いに参考になるはずだ。