明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

株式会社ネットプライス
代表取締役社長兼CEO
佐藤輝英

●佐藤輝英(さとうてるひで)1975年愛媛県出身。93年慶應義塾大学入学。大学3年生のときに北尾吉孝氏と出会いソフトバンクに入社。EC決済サービスのサイバーキャッシュ(現SBIベリトランス)日本法人立ち上げに参画。00年、ネットプライスの代表取締役に就任。04年に東証マザーズに上場。
(株)ネットプライスWebサイト http://www.netprice.co.jp/

第13回 後編

チャンスは貯金できない

BtoCの仕掛けを作りたかった
子供のころは、どんな夢をお持ちでしたか?

佐藤社長: スポーツ界や学界など、世の中にはさまざまな世界がありますが、自分はビジネス界のトップアスリートになりたいという思いをずっと持っていました。両親がそれぞれ自分で事業をやっていたことが影響したのでしょう。幼いころからビジネスの尊さや厳しさを見て育ってきたので、自然と経営に興味を持つようになっていました。

学生時代にインターネットと出会ったそうですね。

佐藤社長: はい、私が学んだ慶應義塾大学SFCには、インターネットを自由に使える環境が早くから整っていたんです。企業のホームページ制作などのアルバイトをしているうちに、インターネットビジネスの可能性を感じるようになりました。

インターネットビジネスにもいろいろありますが、とくにどの部分に興味を?

佐藤社長: eコマースですね。インターネットの技術そのものよりも、もともとビジネスのほうに興味がありましたから。学生時代には、高齢者に優しいショッピングサイトを作ったこともあります。文字を大きくしたり、音声で商品解説したりするなど、いろいろ工夫をしました。そのころから、BtoCの仕掛けを作りたいなという気持ちが強かったですね。

運命的な北尾氏との出会い
本格的にビジネスの世界に足を踏み入れたのはいつですか?

佐藤社長: 大学3年生のころです。当時、大学でインターネット決済の研究をしていて、アメリカのサイバーキャッシュが日本法人を作るという話を聞きました。興味があったので問い合わせてみると、「日本のパートナーであるソフトバンクのミスター北尾に相談しなさい」と返事がきました。そこで北尾吉孝さんと出会い、日本法人の立ち上げに参画することになったんです。

いきなり事業立ち上げに関わったのですか?

佐藤社長: はい。私のやる気を買ってくれたのでしょうね。実は初めて会いにいったとき、北尾さんに「無給だけどいいか」と聞かれたんです。私が「はい、それでもやりたいです」と答えると、「冗談だよ、いまのはキミの気持ちを試したんだ。さっそく明日からうちにきなさい」と言われました(笑)。

その場で決断するのは、なかなか難しいものですよね。

佐藤社長: 私は「チャンスは貯金できない」というフレーズをよく使うんです。目の前にチャンスがあるときに、またあとでこのチャンスを活かそうと思ってのんびりしていると、そのチャンスはもう巡ってはこない。とにかくその瞬間に第一歩を踏み出すことが大切だと思います。

真剣に生きることを学んだ留学時代
もし長いお休みが取れたら、何をしたいですか?

佐藤社長: 本をたくさん持っていって、ヨーロッパでゆっくり過ごしたいですね。列車に乗って、車窓をぼんやり眺めながら読書をするのが理想かな。実は10代のころ、日本の高校を辞めてイタリアのインターナショナルスクールで寮生活をしていた時期があり、そんな旅をよく楽しんでいたんです。もっとも当時はお金もなかったので、1食50円で済ませるような貧乏旅行でしたが。

留学の経験は、佐藤社長の中でどんな位置づけですか?

佐藤社長: 留学の経験は、私の人生観のひとつのベースになっています。その寮には70カ国の人たちが暮らしていたのですが、「自分の国のために何ができるのか」、「ここで学んだことを利用して何になりたいのか」ということを、みんな真剣に考えていた。その様子を見て、私も自分の人生を真剣に生きなくてはいけないという思いを強くしました。

真剣に生きるとは、どういうことでしょうか?

佐藤社長: そのときどきで、つねに一生懸命にチャレンジしていくということでしょうか。頭のいい人ほど、やらない理由を作ってすぐ諦める傾向がありますが、それはもったいない。事業上の判断ならともかく、個人の人生において、できない理由を考える必要はないと思います。読者の皆さんにも、ぜひ積極的に人生を生きていただきたいですね。

編集を終えて
経団連に名を連ねる企業の代表としては最年少の佐藤社長。成功の秘訣を尋ねると、「いや、運が良かっただけです」と謙遜されていたが、いろいろなエピソードをお伺いしていると、人並みはずれた行動力が運を呼び込んだことがよくわかる。年商100億円を突破した現在でも「つねに変わり続けること」を自分に課しているという。次に佐藤社長がどんなアクションを起こすのか、いまから注目しておきたい。