明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

株式会社ロッテリア
代表取締役社長
篠崎真吾

●篠崎真吾(しのざきしんご)1962年、静岡県生まれ。一橋大学法学部在学中に学生ベンチャーを立ち上げて、88年中退。公認会計士の資格を取得後、中央監査法人国際部、マイクロソフト管理本部、マーズ/マスターフーズ財務経理部長・人事本部長を経て独立。05年、企業再生専門会社のリヴァンプに入社。06年、ロッテリアの代表取締役社長に就任して経営の立て直しを図る。
(株)ロッテリアWebサイト http://lotteria.jp/

第11回 後編

ITベンチャーで起業、失敗、
そして会計士に…

「資格でもとろう」で会計士に
公認会計士は人気資格の1つですが、最初に公認会計士になろうと思ったきっかけは?

篠崎社長: 私は大学3年生のときに、ITベンチャーを立ち上げ、それから学校に行かなくなって中退しました。その後、事業がうまくいかなくなって、それなら資格でも取ろうかと思ったのがきっかけです。

篠崎さんが学生のころというと、まだITベンチャーは珍しかったのでは?

篠崎社長: そうですね。当時はまだパソコンが世に出たばかりでした。実はソフトバンクの孫正義さんがビジネスを立ち上げたのも、だいたい同時期なんです。「孫さんという人がパソコンソフトの流通を始めたらしいよ。それは当たるかもしれないね」なんて余裕でいたら、こっちがダメになっちゃいました(笑)。

数字を見れば会社がわかる
さまざまな資格の中で、どうして会計士を選んだんですか?

篠崎社長: 会計士を選んだのは、まさに食べるためだったんです。私は法学部だったので、まず頭に思い浮かんだのは司法試験でした。そこで専門学校に「一般的に何年で受かりますか?」と問い合わせしてみると、「優秀な人なら3年くらいで受かることもある」という答えでした。実は当時もう女房や子供がいたので、3年も無収入だと話にならないと、司法試験は諦めました。次に会計士の専門学校で同じ事を聞いたら、「来月から開講する1年本科から毎年5人から10人前後、合格者が出ますよ」とのこと。それで1年なら何とかなると思い、会計士の試験を受けることにしました。

1年で合格したのですか?

篠崎社長: はい、その1年は、ほんとに死に物狂いで勉強しましたから。ちょうど次女が生まれたばかりでね。家に帰って生まれたばかりの子供の顔を見たら、誰だって「これは何としてでも1年で収入を得なくては」と気合が入りますよ。いまだから笑い話ですが、受からなかったらシャレになっていなかったかもしれません(笑)。

会計士のお仕事の魅力は?

篠崎社長: 会計部門には、企業活動のすべてが数字としてあがってくるわけです。その数字をただ処理するだけに終わってしまうと、何年その会社にいたって会社のことがわかりません。しかし、「この数字ってどうやって生まれたの?」、「この数字の先には何があるの?」という疑問を突き詰めていくと、現場のスキルやテクニックは身につかなくても、会社の動きが手に取るように見えてくる。私にはそれが魅力でしたね。

同じ数字を見ても、ただ処理するだけの人と、その先を見る人。どこが違うのでしょう?

篠崎社長: 私の場合、資格を取る前に会社経営を経験したということが大きかったと思います。ITベンチャーを経営していたころは、会社の仕組みづくりに相当頭を悩ませていました。その経験があるから、会計士になって企業の監査にいったときも、数字を見て「ああ、顧客管理はこうすればよかったのか」、「在庫管理にこんな方法もあったのか」と考えるようになりました。もし学生ベンチャーで失敗せずに最初から会計士を目指していたら、そういう数字の見方はできなかったかもしれません。

熱意のある人に門戸を開く
―篠崎社長は、さまざまな仕事や職場をご経験されていますが、転職についてどうお考えですか?

篠崎社長: 私は昔から、友人たちに「おまえは自由でいいよな」と言われるタイプでした。でも、みなさんもホントはフレキシブルな生き方ができるはず。その気になれば、転職なり独立なり、いくらでも新しいことにチャレンジできるんじゃないかと思います。

ただ、新しいことに挑戦するのは勇気がいります。

篠崎社長: たしかにそうかもしれませんね。清水の舞台から飛び降りるにしても、どれくらい高いのかがわからないから、足をくじくのではないか、大怪我するのではないかと不安になります。その気持ちはよくわかりますが、思い切って飛び降りてみると、案外、たいした高さではないことがほとんど。新しいことに挑戦したい気持ちがあるのに、勇気が足りないせいで足踏みしているのはもったいないです。

ロッテリアもそういう人材を求めている?

篠崎社長: これまで社員は基本的に新卒採用で、中途採用も店舗でバイトから頑張ってやってきた人だけでしたが、今後は熱意を持った人に広く門をあけていくつもりです。ロッテリアは、いま第二の創業期。いい意味で会社を活性化させてくれる異分子を取り入れて、新生ロッテリアを作っていきたいですね。

編集を終えて
会計士出身の企業トップと聞き、お会いする前は“冷徹な経営者”かと思ったが、実際お会いした篠崎社長は、仕事が出来そうな雰囲気とともに親しみやすさも兼ね備えた方だった。「お客様の声と真摯に向かい合いたい」とおっしゃる篠崎社長のお話を聞き、今後ロッテリアがどのように変わっていくのか楽しみに見ていきたいと思った。