明日の仕事にきく。読めば俄然やる気になる ビジネスキーパーソンwebインタビュー

株式会社インフォバーン
代表取締役会長
小林弘人

●小林 弘人(こばやし ひろと)1965年生まれ。1992年、株式会社同朋舎出版に入社。94年11月、米インターネット関連雑誌『WIRED』の日本版『ワイアード』を創刊、編集長に就任。98年、10月株式会社インフォバーンを設立、月刊誌『サイゾー』を立ち上げ、初代編集長を務める。現在、iTunes Music Store Japanでベストセラーとなった稲川淳二氏の怪談オーディオブックのプロデュースやポッドキャストの検索サイト「Podcast Navi」の立ち上げなど、Web上でのメディア開発に注力している。
株式会社インフォバーンwebサイト: http://www.infobahn.co.jp

第9回 後編

自分から動き、不可能を可能に変える

小学生のころからこだわり続ける
小林会長は子どものころどんな風でしたか?

小林会長: 大人になってから、小学生のころに書いていた生活日記というのを見つけました。先生との交換日記みたいなものなんですが、先生に何度も同じことで注意を受けているのですが、ぜんぜん聞いていませんね。前日に注意を受けても、翌日もその翌日も同じことを書いて、また注意を受けていました。人のいうことをまったく聞かない子どもだったようですね(笑)。

でもそれは裏返せば、どうしても譲れないこだわりがあったということではないですか?

小林会長: そうかも知れません。小学生のころから他人に何を言われようが気にしなかったような気がします。親からの指摘としては、とにかくこだわり続ける子どもだったようです。

ネットの世界に調査報道を持ち込む
そういう自分のこだわりを大切にする姿勢が今のインフォバーンにも生きているんですね。

小林会長: そうですね。インフォバーンという会社、現在発刊している『サイゾー』をはじめとする雑誌、そして起業前に創刊した『ワイアード』など、今までやってきた全ての仕事は、他にない価値を作り出したいというこだわりを持ってやってきました。

具体的には?

小林会長: 例えば、『ワイアード』創刊時は、まだ普及していないインターネットが切りひらく未来を、デザインからも伝えたいと思いました。そこで、当時としては初めての6色印刷やフルDTP(※注)に挑戦したり、記事もよくある情報誌のとは違って、じっくりと読めるものにするため、ライターさんたちには常にリバイス(改訂)指示を出して、ちょっとした緊迫状態でした。

『サイゾー』では多くのマスメディアがIT革命をヨイショしていた時期に、いくつもスクープを飛ばしました。事実、当時われわれが告発したいくつかの企業は、その後刑事事件に発展しています。ネット系の分野に調査報道を持ち込んだという点ではひとつのこだわりだったかと思います。

(※注 雑誌などの出版物のデザイン・レイアウトなど、印刷までの作業をパソコンで行なうこと。)

そんなこだわりを持つ小林会長の下で働くのは難しそうですね(笑)。

小林会長: そんなことはないですよ。ただ、インフォバーンという会社に向いている人とそうでない人はいると思います。メディアに漠然としたあこがれを持っている方も多いですしね。私も採用面接をやっているんですが、面接に来られる方は皆さん、良いことしか言いませんから、本当のところを見抜くのは難しいですね。

ミスマッチは会社にとっても、採用される側にとっても不幸ですからね。

小林会長: そうですね。昔は「人が足りないし、少しでも良い面があれば採用しよう」と思っていたのですが、最近は「長期において会社を助けてくれる人材を優先的に採用しよう」という風に考えを変えました。 最終的には、人柄と向上心を一番重視しています。後はチームを盛り立てることができる人、地頭(じあたま)というか知力があることですね。

成功の秘訣は「今の仕事を大切にする」
読者にビジネスで成功するためのアドバイスをいただけますか?

小林会長: 我々のようなベンチャー企業では、自分から動こうとすることが大切です。大げさにいうと不可能を可能にすることです。

私も『サイゾー』を創刊するとき、周りからは「そんな雑誌は3号で潰れる」と言われました。常識に照らし合わせれば確かに不可能に思われるかもしれません。でも実際は可能になりました。最初から不可能だとあきらめないで欲しいですね。

なるほど。他にはありますか?

小林会長: 今ある仕事を大切にして欲しいですね。小さな仕事だからといってそれをきちんとこなせない人に大きな仕事ができるはずがありませんし、今をバカにしていると貴重なチャンスを逃してしまいます。そのことに気づいて今を大切にして欲しいですね。

編集を終えて
小林会長は社内でも、また社外でもコバヘンと呼ばれることが多いという。コバヘンとは小林編集長の略。インタビューを通して、会長になられた今でも現役編集長時代と変わらないこだわりを持ち続けられていることが伝わってきた。先日、大手のベンチャーキャピタルの社長に、ベンチャーが成功するかどうかは、トップの熱意で6割方決まるという話を伺った。その言葉の通り、インフォバーンの成功の裏には、小林会長のこだわり、そして熱意があるのだろう。(インタビュアー:まぐまぐ 野田宜成)