自分の強みは徹底的に磨く
『【全力マネージャー】マネジメント1000本ノック』というメルマガを発行している俣野成敏です。前回から5週間にわたって連載中の「ビジネス発想術」では、読者の皆さんがビジネスパーソンとしての市場価値を高めるためのヒントをお届けしていきます。本日、第2回目のテーマは、「自分の強みは徹底的に磨く」です。
現在の会社を創業する前に勤めていたのは、いわゆる大企業。入社して感じたことは、組織が専門家の養成所だという現実だった。専門分野であれば長い時間をかけた者が有利である。先に入社している「専門家」集団を後から入社した者が努力だけで追い越すのが至難の業であることは、容易に察しがついた。
会社で出世することを仮に「勝つ」という言葉に置き換えるとするならば、専門性だけが評価基準の職場で、「勝つ」ために何の方策も見出せぬまま、目の前の下請け業務をこなす日々が続いた。
そんな若かりし頃、今までの流れを変える出来事が訪れた。
ある日、所属部署の担当役員が、在籍年数を問わず部門全体の改善案を提出するように全部員に課したのだ。他の社員は斜に構えていたようだった。それは無理もない。専門性だけが至上の職場で"部門全体"の改善案に興味など持てないからだ。しかし「勝つ」ための方策を探していた私には、願ってもない機会に思えた。当時、私は1番の若手だったが「専門家」集団にはない、会社全体を俯瞰する視点で、改善案を練りに練った。
提出後しばらくして、その担当役員が「俣野の案が他の誰よりも的を射ていた。いくつかは実現に移したい」と全部員を集めた会議で褒めてくれた。それまでは雲の上の存在で、直接話をする機会すらなかったその担当役員は、平社員だった私に明らかに目にかけてくれるようになった。
この体験を通じて、専門性だけを求められる職場では逆に「全体を見渡す視点」こそが他の「専門家」が持たない、私だけの"強み"であると確信した。そして、当時の私には唯一の"強み"だった「全体を俯瞰する視点」を磨くために、徹底的に行動に移した。部門長クラスが集まるような重要会議にも「書記をやるので出席させてほしい」と上司に直談判までしたのだ。
"強み"は人それぞれだが、何かひとつでも尖らせることができるなら、そこを起点に新しいチャンスを掴むことができる。特定の分野では強い相手でも自分の得意分野に相手を招けば「勝つ」ことはあるのだ。
到底勝てそうにない専門家集団の中にいたが、専門を外せば素人集団である。専門を外せば勝てる分野は必ずある。そのためには、見つけた自分の強みを放っておかず、行動を通じて徹底的に磨いていくことだ。